第16回 チープシーツ(島田健=日本経済)

◎ちょっと自虐的な3A賛歌

▽外野席の最上段が好き

ドミソソッミソー。大リーグ球場でおなじみのオルガンファンファーレで始まるこの曲。
「この町は大きいとはいえないし、小さいわけでもない みんなはどちらでもないという。僕らのチームはマイナーリーグかもしれないけれど、少なくとも3Aに属しているんだ」「僕らが座るのは右翼フェンスのずっと上、マルボロの看板の下 勝手にウエーブするし、目が見えなくたってそんなコールは出来るぜ、と審判をくさす」
 中途半端に大きく、大リーグはないが、3Aはあるという町の、安い外野席のてっぺんからヤジを飛ばす姿が眼に浮かぶ。

▽気の抜けたビールが好き

大リーグでもないチームを、それも金をかけずに見るファンだから、歌詞も少し自虐的だ。繰り返しは、
 「ビールは思いっきり気が抜けたヤツが好き ホットドッグには辛子とピクルス うちにはいい投手がいるんだけれど、あれなんという名前だっけ 綴りなんてとっても無理だよ 優勝争いなんて気にしない 外野深くかっ飛ばす打球は好きだね だってこんな安い席からは見えるのはそれしかないだろう」

▽ナッシュビル・サウンズが好き

歌うはカントリー音楽の人気バンド、アラバマ。 1993年(平成5年)暮れにアルバムでリリース、翌年春にシングルカットされ、ビルボードのカントリーシングルのチャート入りを果たした(13位)。
 作ったのは彼らでなく、ランディ・シャープとマーカス・ハモンの共作だ。ともにカントリー音楽の聖地、テネシー州ナッシュビルの3Aチーム、サウンズ(レンジャーズ傘下)のファンで、作るのはもちろんカントリーが主だ。リリース以前に別のバンドで録音したが、お蔵入り。最盛期は過ぎたとは言え、人気バンドに提供して大正解だった。

▽カントリーが大好き

3Aチームはいい選手が続々とメジャー入りしていく。気がつくと自分たちも年を取っていく。でも、と唄は訴える。
 「この町も到底小さいとは言えなくなった しかし、僕は丁度いい大きさの町がなくなって寂しい 中西部のど真ん中にあり 無名の投手や、無名のローカルバンド そして辛子にピクルス、そんなものがあればいい」
 ニューヨークやロサンゼルスといった大都市よりも、中西部の田舎都市がいい。そしてロックや新しい音楽でなく、古いカントリーをこよなく愛する、そんなメッセージも感じさせる唄である。検索はcheap seatsで。(了)