投球制限を背負うエース

◎投球制限を背負うエース

 「1週間500球まで」。高校野球の“球数制限”が決まった。2020年の選抜大会から導入されることになった。
 理由は「選手の健康管理」。
 投球数は投手に限られたものである。決めた委員の方に聞いてみたい。
 「キャッチボールは何時間でもいいんですか」
 「バットスイングは1000回振ってもOKですか」
 「ランニングは何㌔でも、何時間でもよろしいんですか」
 「筋肉トレーニングは?」
 などと。野球はそれほど複雑なメニューがあるスポーツであって、投手だけ、というのは異論が今後も出てくるだろう。
 翻って危険と思われる競技はいくらでもある。
 ラグビーや柔道は障害を負う選手が多いと聞く。ボクシングは顔面を殴るのである。
 野球は人気スポーツだけに、さまざまな意見、感想が寄せられる。高校野球はとりわけ関心が高い。テレビで全試合が完全中継されるのは、おそらくこのイベントだけだろう。
 真夏の甲子園大会がきっかけで今回の制限が生まれたのだが、決勝でエースが球数制限で途中で交代となったら…と思うとどんなシーン、雰囲気になるのか、とても想像できない。
 「優勝するより、勝つことより、球数が最重要なんだよ、高校野球は-」
 監督はそう言わざるをえないだろう。
 確かなのはマウンドを降りるエースが泣くじゃくることである。(菅谷 齊=共同通信)