「大リーグ ヨコから目線」(24)-(荻野通久=日刊ゲンダイ)

◎監督のトレンドは「メジャー帰り」

▽工藤監督の後任はフロント入りの城島健司

 2019年のヤクルトの監督に高津臣吾が就任した。18年までは二軍を指揮、満を持しての一軍昇格だ。
 高津監督といえば、ヤクルトの抑えのエースとして活躍。04年から2年間、大リーグのホワイトソックス、メッツでプレーしている。メジャーを経験した日本人選手が一軍監督になるのはロッテの井口忠仁監督に次いで2人目だ。そしてこの傾向は今後、ますます強まりそうだ。
 18年の12月20日にOB城島健司のソフトバンク球団会長付きアドバイザー就任が発表された。明らかな次期監督含みの起用である。フロントとはいえ、キャンプにも参加し、選手を指導することもあろう。
 城島といえば06年から4年間、日本人初のメジャーリーガー捕手としてマリナーズで活躍した。10年に日本球界に復帰したが、古巣のソフトバンクではなく阪神だった。
 城島は、
 「ホークスで(現役の)ユニホームを脱ぎたい」
 と常々言っていただけに、古巣と何かトラブル、確執があったのではと噂われた。
 だが、09年のシーズンの夏、日本球界復帰を電話で相談したのは王貞治球団会長。それを受けて王会長はフロントをシアトルに幹部を派遣。退団、移籍に備えての話し合いが行われた。
 その席でのフロントの発言が城島の感情を害し、そのため捕手補強が急務で獲得に熱心だった阪神入りになった、と当時の関係者から聞いた。
 当時のフロントはすでに球団を去っているし、現役引退後、王会長は度々、城島に古巣で指導者になるよう声をかけてもいた。それだけ能力を評価しているからに他なるまい。
 城島も、
 「野球の原点、体にあるのはすべて王さんに教わった。何か力になりたい」と話すなど、両者の結びつきは強い。

▽これだけいる元メジャーリーガーの監督候補

 城島だけではない。すでに西武は松井稼頭央(元メッツ)が二軍監督を務め、辻監督の後任として出番を待っている。オリックスでは田口壮(元カージナルス)が一軍ヘッドコーチ。こちらも監督昇格は時間の問題だろう。
 在野では、巨人は松井秀喜(元ヤンキース)の監督就任を諦めていないそうだし、オリックスもイチローにユニホームを着てもらいたい意向に変わりはない。黒田博樹(元ドジャース)は広島・佐々岡監督の後釜としてリストアップされている。現役でもヤクルトの青木宣親(元ブルワーズ)や西武の松坂大輔(元レッドソックス)は将来の監督候補である。
 井口監督は2月1日のキャンプイン初日から実戦練習をするなど、メジャー流を取り入れている。日本の球団ではキャンプの最初の3、4日は体作りが中心だ。
 04年のシーズンオフ、アメリカから帰国した高津に取材したとき、日米の野球の違いを痛感したと語り、例えばこんなことも言っていた。
 「日本では監督、コーチと選手とは距離がある。話すときもなんとなくかしこまる。アメリカでは近い位置、関係で話をする。フレンドリーに話し、意見を言い合う」
 最近、上梓した「二軍監督の仕事」の中でもデータの生かし方、練習の内容ややり方、メディアのあり方など彼我の違いについて触れている。  
 ドラフト会議で上位指名された高校生や大学生が、
 「将来は大リーグでプレーしたい」
 というのがもはや当たり前になっている。メジャーリーガーは夢ではなく、現実の目標になっている。
 そうした風潮の中、高津監督がどんな采配を振るうか楽しみだ。(了)