◎「セ・リーグDH採用で球界が変わる?」-(山田 收=報知)

第1回 原監督発言の波紋
 2019年10月24日。巨人・原辰徳監督が、山口寿一オーナーへの日本シリーズ終了報告後、メディアの囲み取材で注目すべき発言をした。
「ソフトバンクに相当、差を付けられている感じがする」
「セ・リーグはDH(指名打者)制がない。(セも)DH制を使うべき」
 シリーズでホークスに4連敗と完膚なきまでに叩き潰された敗軍の将の言い訳と取る向きもあったが、ファンにとっては、一考に値するテーマと思えた。
 直後のスポーツ報知のWEBアンケートには2日間で6万7000票余りの声が集まり、賛成は76%だった。
 確かに日本シリーズは、19年までの10年間、パが7連覇を含む9勝1敗とセを圧倒している。DHを採用した1985年以降、パの110勝91敗3分けだ。2005年から始まった交流戦でも、15シーズンでパが10年連続14度の勝ち越しを決めている。
現在のプロ野球界は、間違いなく「パ強セ弱」だ。その一因に、セが採用しないDH制があるのでは、というのは論ずるに値するテーマだと思う。
 「セもDH」は、原監督の持論で、巨人球団首脳にもリーグへの働きかけを訴えかけたようだ。11月11日の理事会では議題に取り上げられなかったが、原監督は20年1月22日の12球団監督会議で、現場の責任者たちに、改めて提案。今後の論議のきっかけを作ろうとしたようだ。
 MLBでは、一足早く両リーグともDH採用と報じられている。マンフレッド・コミッショナーは以前、
「ナ・リーグのDH採用については2022年から検討する」
と発言していた。ところが、新型コロナウイルスの影響で開幕が7月4日以降に延期される今季、一気にナ・リーグもDH採用に決定した。
その背景を考えると、
① 投手の故障を避ける
② ベンチ入りが30選手と増える
③ 東・中・西の3地区制で実施することで、従来のインターリーグの試合が増加するため、DH制が採用しやすくなった
と思われる。
今回はあくまで緊急事態への対策ともいえるが、シーズン終了後に、継続するかどうかが、明確になるだろう。
パがDH制を採用したのは、MLBでア・リーグが採り入れた翌々年の1975年。過去の例からいうと、NPBでも数年後に実現、という見方もある。今回の連載では、DH制にまつわる話題を通して、セの採用で球界にどんな影響を及ぼすのか、推察したいと思う。(続)