◎1イニング勝利投手、投手総力戦の時代

 2020年7月31日、中日-ヤクルト戦をテレビ観戦。終盤、珍しいシーンがあった。5-3でリードした中日の8回裏、走者を置いた場面で先発投手の大野雄が打席に向かうと、スタンドから拍手が起きた。9回もマウンドに上がり、完投を目指すことを称えたのである。
 大野は128球目でヤクルトの若きスラッガー村上を右邪飛に打ち取り、勝利を手にした。完投する投手を滅多に見ることができない現在のプロ野球。完投投手を目したファンは実にラッキーといえる。
 同じ日、対照的な勝利投手が出た。ソフトバンク-西武戦。ソフトバンクが4-3とリードした6回表。先発東浜(5回3分の1)をリリーフした嘉弥真は同点にされたのだが、その裏に味方が1点を挙げたので勝利投手になった。投球回数3分の2。
その前日のロッテ-楽天戦でも同じようなことが起きた。楽天の先発弓削は4-3とリードしながら5回裏二死のところで(4回3分の2)降板。救援の久保が打者1人を抑え勝利投手になった。
 嘉弥真は決勝点を挙げたときの投手、久保は先発が勝利の条件の5イニングを投げていなかったため、ともに勝利投手となった。両試合ともリリーフ全員に勝利投手、ホールドポイント、セーブポイントが印された。先発だけが何もなしだった。ルール通りとはいえ、運動量の違いを思うと「ん?」。
 この不思議な勝利投手を見て、南海ホークス球団史の記述を思い出した。1949年(昭和24年)と古い出来事だが、巨人戦で降雨日没のため6回コールドゲームで南海が勝った。勝利投手は4回3分の2で降板した松本に。説明によると、当時は「先発5イニングは必須条件ではなく、公式記録員がもっとも勝利に貢献した投手を勝利投手にしてもよかった」と。現実的で納得、と思った。
 現在は年々、先発投手の投球回数が減り、後半になると1イニング専門投手が次々と出てくる。そこで“1イニング勝利投手”が増えていく。オープナー方式の採用を見ると、投手はパーツ扱いになり、さらに個人記録はこじんまりになる、と感じる。
投手戦など望むべくもない時代になった。毎試合、両軍合わせて7、8人の投手が出てくるのだから。終盤のエース対4番打者のシーンもほとんど見られない。「投手の総力戦時代」というのだろうか。(菅谷 齊=共同通信)

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