「野球とともにスポーツの内と外」-(佐藤 彰雄=スポーツニツポン)

◎プロスポーツの観客・考
新型コロナウイルス禍にあって試行錯誤を余儀なくされていたプロ野球界が、次第に元の姿に戻りつつあります。無観客→条件付きの有観客→条件の緩和、と進み、徐々にスタンドの歓声も聞こえるようになりました。
スポーツ、特にプロ野球を初めとするプロスポーツに無観客はあり得ないなァ、とつくづく思います。選手たちの不屈の闘魂、果敢なチャレンジ、快挙の達成…などなど。そういうものに対する敵・味方を超えたファンの称賛、敬意には胸を打つものがあり、選手たちもまた、その声を飛躍の糧とします。
▽観客がいてこその…
観客について古い出来事を思い出します。1984年に広島CC八本松コースで開催された女子ゴルフのUSLPGA公認「マツダジャパンクラシック」(タイトル名は当時)でのことです。
首位のジャン・スチーブンソン(オーストラリア)を岡本綾子が2打差で追う最終日の優勝争い。広島は岡本の故郷とあって観客(ギャラリー)が過熱。ボギーを叩いたスチーブンソンに「ナイス・ボギー」の声が飛んでしまいました。あってはならない“ナイス・ボギー事件”です。
そのときの岡本は、やり場のない怒りと悲しみに涙を流して抗議したものですが、後年に出版した自著「メモリアル・グリーン」でこの件に触れ「私の人生に深い傷痕を残す最大級の事件」としてこう記していました。
「最高の舞台を成功させるためには観客も重要なプレーヤーの一人ではないか」
▽痛恨の“ナイス・ボギー事件”
“身びいき”はどこの国にもあり、過熱が引き起こすマナー違反は、ときに取り返しのつかないものに発展してしまうこともあります。が、国際舞台において日本の観客は、試合後の清掃などそのマナーの良さで各国の模範になっており、捨てたものではありません。
プロ野球界も次第に観客が戻り、とともにあの熱狂も戻ってくることでしょう。コロナ禍で我慢を強いられていたファンにとっては喜ばしいことですが、ここはひとつ“観客もフェアプレーの精神を”と行きたいものです。(了)