「野球とともにスポーツの内と外」-(佐藤彰雄=スポーツニッポン)

◎セも「DH制導入」案に思うこと
野球少年を含む小・中学生たちが好きなスポーツ選手は、圧倒的にMLBエンゼルスの大谷翔平投手なのだそうです。
玩具・模型などを手がける「㈱バンダイ」(本社=東京・台東区)が行っているアンケート調査の結果(2019年9月時)によると、大谷がフィギュアスケートの羽生結弦選手、テニスの大坂なおみ選手らを抜いて1位の座を獲得しています。
子供たち、特に野球少年たちにとっては、大谷の投げて打つという“二刀流”の姿は、何よりも「カッコいい」し「自分もいつかはああなりたい」と日々の励みとしているのでしょうね。
そういえば私たちの少年時代を振り返ってみても、野球で遊ぶときは決まって大柄で力の強い子供が「投手で4番」の憧れのポジションを得、投げて打って走る、という野球の姿を素直に実践、泥だらけになっていたものでした。
▽日本シリーズ惨敗を受けて
プロ野球界ではこのところ、セ・リーグによる「DH制導入」案で議論が高まっています。投手の負担減というメリットから「国際的な流れ」でもある中、ここへきて導入論議が活発化したのは、昨年(2020年)の日本シリーズの結果によるものが大きいと言われています。
 NPBが同シリーズ全試合でDH制を採用することを発表し、まあ、それが原因かどうかは分かりませんが、パのソフトバンクがパワー野球でセの巨人を一蹴(4連勝=巨人は2年連続の4連敗)したことにありました。
巨人が惨敗をDH制のせいにするのはお門違いというものでしょう。やはり、力量の差というところに目を向けなければいけません。とともにDH制を導入しているパは、パとして今の形を維持するにしても、セが導入した場合、野球は9人が打って守って走るという本来の形を逸脱してしまう怖さがあります。
▽少年野球への影響は?
スポニチ本紙の専属評論家・張本勲氏は導入を反対。その理由として「野球というゲームの本質に反する」という意見を紙面に記しました。
同氏は「“投手の打撃”が好きなファンも多いだろう。それも魅力のひとつ」と主張しています。確かに投手も打席に立つことで大谷という“二刀流”も花開き、野球少年たちの憧憬の的になって彼らの練習にも熱が入ります。
プロ野球全体のDH制化は、本来の野球の形を変え、さまざまに影響を及ぼすことにもなり、慎重でありたいものです。(了)