「セ・リーグDH採用で球界が変わる?」―(山田 收=報知)

第26回 ナ・リーグDH制と日本への影響③
 2022年のプロ野球の特徴と言えば「投高打低」ということ。前半戦で4度もノーヒットノーランが達成された。1943年以来なんと79年ぶりの快挙だという。1リーグ時代には、1937年3度、40年5度、41年3度、43年4度…と同じ年に何度も演じられている。43年といえばまさに戦時下。ボールなどの品質も悪かっただろうが、各球団とも主力選手が出征して、打者のレベルも低かったことが十分に想像される。
 同様の事態が現在、目の前で展開されている。拙稿を書いている6月26日現在、セ・リーグの3割打者は7人。といっても3割0分台が4人だ。パはトップの松本剛(日本ハム)こそ3割4分台だが、全体で2人しか3割ラインをクリアしていない。
 一方で、防御率を見てみると、チームでは、セは阪神が2点台。パは最下位の日本ハム以外の5球団が3点を切っているのだ。個人でも佐々木朗希(ロッテ)、山本由伸(オリックス)の快記録達成者を始め、なんと5人も1点台が並ぶ。セも2人がマークしている。もちろん、そのまま1点台をキープできるかは分からないが、投高打低の様相は固まってきているように思える。
 とくにパでは前述の佐々木朗、山本に代表されるような球速160㌔前後のストレートに多彩な変化球を持つ先発に加えて、リリーフ陣には球速150㌔を超えるパワーピッチャーが多く存在しているのが大きい。
 かつては、投手受難時代が続いた。打者には、練習用の打撃マシンがあり、ビデオ映像で相手投手を研究するなど打者上位になる環境がそろっていた。それが、現在ではトラッキングマシンの出現で、実際に投げた球の速度、回転数、回転軸、投球角度、リリースポイントなど即座に分析できる。そのデータから、ピッチングの改善点が示される。そんな時代に突入している。
 となると、今度はバッティングの進歩を促すことになる。技術面では新たな武器の開発を待つとともに、打撃低迷を脱却する方法の一つとして、セ・リーグのDH採用を検討してもよいのかな(我田引水でしょうか)と、思う。野球の楽しみ方はいろいろあるが、活発な打撃戦(こればかりではつまらないが)を求める声も間違いなく存在している。
 セ・リーグがDHを今後採用するかは不明だ。でも検討することはあっていい。セ6球団にとって、毎年経験する制度であるからだ。今年も9試合あった交流戦である。22年は前年に続いて、セ(55勝)がパ(53勝)を上回ったが、残念ながら、パ主催試合(DHが使える)では、パ30勝、セ24勝だった。「DHがあるからパが強い」と単純に決めつける気はない。9試合だけのデータだが、今年の交流戦DHをめぐる状況は、昨年とは少々違っていた。セ6チームのDH成績は、204打数34安打、打率.167、3本塁打、14打点。対するパは、191打数44安打、打率.230、3本塁打、13打点と、ともに低迷した。細かな分析は次回に。(続)