◎春のキャンプー(菅谷 齊=共同通信)

2月1日。プロ野球の春季キャンプインである。「プロ野球の元旦」という野球人もいた。自主トレーニング、合同自主トレーニングを経て温暖後を求めて行く。
このキャンプの内容と結果がペナントレースの行方を決める、といってもいいほど重要な練習である。天候に左右されるから、まさに「運を天に任せる」ことになる。長嶋茂雄が初めて監督になったとき、宮崎キャンプは雨にたたられた。中旬から米国ベロビーチに向かったが、このキャンプ前半の調整不足が球団史上初の最下位となった、という見方が多かった。
単独球団が初めて春季キャンプを張ったのは1946年(昭和21年)に愛媛・松山での巨人だったといわれている。以後、各チームが行うようになった。
キャンプ地は平均気温が高く安定したところで、当初は九州や四国が多かった。現在は沖縄が主流である。沖縄は平均気温16度以上。調整が神経質な投手にとってはありがたい環境といえよう。
ホームラン打者のフリーバッティングを見ると、日ごとに飛距離が伸びる。初旬はフェンス前で落ちていた打球が1週間も経つとスタンド入りする本数が増え、そのうち場外に消える。気温上昇とともに打球のスピードが上がり、遠くへ飛んで行く。
投手も下旬になると、ストレートがものすごい音を立てて捕手のミットに突き刺さる、得意の変化球も狙ったコースへ。やはり気温とともに調子が上がるのが分かる。
キャンプの食事も話題の一つである。
400勝投手の金田正一がロッテ監督に就任した73年、鹿児島でのホテルでの夕食は豪華だった。肉、魚と質、内容は充実し、2時間ぐらいかけて食べていた。12球団一の食事といわれたものである。
対照的に宿舎の食事では物足りず、夕食は外に出て摂る選手も数多くいた。もちろん高給取りのスター選手で、プロは格差社会と感じたものだった。
キャンプの狙いは「ワンチーム」を作るためで、優勝に向かって心を一つにしよう、というために合宿する。高校生、大学生と同じである。
このキャンプ費用はオープン戦の入場料などで補う、とソロバンをフロントは弾いている。人気チームとの対戦が重要となる。
大リーグの春季キャンプは球団によってスタート日はまちまち。まず投手がキャンプに入り、野手はその後から動く。しかも数日経つとオープン戦が始まる。夫人同伴、家族同伴というから日本のようにピリピリ感はほとんどない。ゴルフを楽しむ監督もいる。だから取材していても実に楽しい。(了)