「大リーグ見聞録」(62)-(荻野 通久=日刊ゲンダイ)

◎ルール改正で野球は面白くなる?
▽若者対策でスピードアップ
 今季、メジャーリーグ機構(MLB)は従来のルールを大幅に変更した。
① ピッチロック 投手は走者なしでは15秒、走者ありでは20秒以内に投球する。制限時間を超えれば1ボールが追加される。けん制も3度までで、その間にアウトにできないと走者は進塁する。打者も時間制限の残り8秒までに打席に入らないと、1ストライクが課せられる。
② 守備シフトの制限 内野手は二塁ベースを挟んで2人ずつ守らなければならない。内野手が入れ替わって守ることも禁止。
③ ベース拡大 本塁を除き、各ベースの大きさが15インチ(約38㌢)四方から、18インチ(約46㌢)四方に拡大する。
これらが主要な変更で、いかにも変化を恐れないMLBらしい。近代野球ではもっとも大きな改革とも言われている。
試合ではベンチの前やバックネットのフェンスに電光掲示板を設置。20、19、18秒…と投手の投球間隔を表示する。シフトに関しては、投手が投げる直前に、内野手が二塁ベースを超えて守備位置を変えることも禁止。1ボールが加わる。かなり厳密に適用されることになる。
目的は試合のスピードアップと、野球のエキサイティングさを取り戻すことだという。すでにマイナーリーグでは実施され、試合時間は26分短縮。盗塁の試みも増え、成功率も2019年の68%から昨年は77%にアップした。
アメリカでは野球のファン年齢の中心が50代。バスケット、フットボール、アイスホッケーに比べて高い。他のスポーツに比べ、試合時間も長い。こうしたルール改正で、若い世代に野球の面白さをアピールする狙いだ。「1970年代、80年代のベースボールに戻す」と解説するMLB関係者もいる。
▽「試合の動きが活発になる」
それでは70年代、80年代はどんな野球だったのか。代表する選手でみると分かりやすいだろう。
70年代では野手では通算最多安打4256本のピート・ローズ、投手では通算最多奪三振(5714)のノーラン・ライアン、通算311勝のトム・シーバー。80年代ではシーズン最多130盗塁(通算は1406)のリッキー・ヘンダーソン、「オズの魔法使い」と呼ばれたオジー・スミス(遊撃手として13年連続ゴールデングラブ賞)らが人気を博し、ファンを熱狂させた。
投手はどの時代でもヒーローが出現する。この2世代では安打製造機のローズをはじめ、「スピードスター」や「守備の職人」が新たなヒーローになっている。
現在は極端な守備シフトで、内野手は本来の守備位置を守らないケースが増えた。そうしたシフトを破るべく、パワーヒッターの評価が高っている。またビッグデータ収集、分析で打者も、投手も丸裸にされる最近のメジャーリーグでは、「足や守りのスペシャリスト」が生まれにくくなってもいるのかもしれない
ドジャース時代にMVP、ゴールデングラブ賞、シルバースラッガー賞を受賞したコーディ・ベリンガー(今季はカブス)はテレビの取材に「(シフトのルール改正で)活発な動きが戻ってくる」と歓迎している。
バスケットやフットボールと異なり、時間の制限がないのが野球だ。果たして大胆なル―ル改正で、どんな野球になるのか。エキサイティングになるのか。ファンを熱狂させて球場に呼び戻せるのか。ルールの運用を巡って、現場の混乱、困惑も必至だろう。シーズンが楽しみでもあるし、心配でもある。(了)