◎のどかな野球が消えていく(菅谷 齊=共同通信)
投球数の制限など投手に関するルールがよく変更されている。日本流にいえば「令和の改革」である。
野球のルール変更は大リーグが先行し、それにならって日本は採用となる経過を辿る。むろん、すべてではない。大谷翔平の同一試合で打者と投手の起用、いわゆる“大谷ルール”はWBCでは採用されることになったが、日本の公式戦ではまだである。
大リーグでは投手の投球間隔もある。捕手から送球を受けた投手は、走者なしの場合は15秒以内に、走者がいる場合は20秒以内に投じなければならない。このボールを保持している長さを計ったところ、大谷は長く保持している一人だという。
そんな折り、大リーグのオープン戦で「大リーグ史上初の出来事が起きた」と外電が伝えた。2月25日(日本時間26日)のことだった。
アトランタ・ブレーブスvsボストン・レッドソックスの一戦で、スコア6-6のまま9回裏を迎えた。ブレーブスは二死満塁とし、打者のボールカウント0-2となったが、3球目を投げる前に主審が「三振」を宣告し、引き分けで終わったのである。投手が投球をしないのに、だ。
主審は打者に“ピッチロック”の新ルールを採用したからだった。打者は「8秒以内に打席で構えなくてはならない」という規則なのだという。投手だけでなく打者にも新ルールが採用されていたことが分かった。
このケースは試合時間の短縮につながるから注目されるだろう。
野球はルール変遷の歴史を持つ。初めは、投手は下から投げていたし、走者にボールをぶつければアウトだった。四球も年ごとにボール数が減って現在に落ち着いた。指名打者(DH)制度の導入は大きく形を変えたルールといえた。ドラフト(新人選択)制度やFA(フリーエージェント)制度も特徴的である。日本はそのほとんどを導入している。
今後、試合のイニングが7回になるかも知れないし、審判はAI(人工知能)になる可能性も否定できない。のどかでおおらかだった野球が消えていく。(了)