第64回「ザンジバル」(島田 健=日本経済)

◎バーの戯れ歌
▽ニューヨーク生まれ
ニューヨーク市のブロンクスで生まれ、ロングアイランドで育ったビリー・ジョエルは「ピアノマン」で人気者になり、「素顔のままで」「ストレンジャー」「オネスティ」など大ヒットも目白押し。唄いあげるタイプだが、大都市のざわめきをとらえた洒落た唄もある。ザンジバルはアフリカのザンジバル島を普通は指すのだが、この場合はスポーツバーの名前として使われている。1978(昭和53)年のアルバム「52丁目」で発表されたこの曲には当時の話題やウエートレスにちょっかいを出す様が軽妙に描かれている。
▽ピート・ローズ
大リーグの話題でまず出てくるのがピート・ローズ。78年はシンシナティ・レッズで4年連続13回目の打率3割をマーク、5月に3000安打を達成すると6月から7月にかけて44試合連続安打を記録して時の人にもなった。「ローズ 彼は自分が試合の大した花形だと知っている」と大いに持ち上げている。ただ、ファンであるヤンキースも忘れていない。「でも、ヤンキースはいつも新聞のトップを飾るんだ」。事実、この年はレッドソックスを逆転して地区優勝を果たし、ワールド・シリーズでも2連覇を果たした
▽差し替え
しかし、ローズは89年に野球賭博に関与したと疑惑が浮かび、大リーグから永久追放処分を受けてしまう。90年には脱税で有罪判決を受けるなど評判はガタ落ち。こんな状況になってくると、この唄をそのままツアーで演じるには違和感を生じることになる。ジョエルのファンによると06年のライブアルバムでは「he’s such a credit to the game」から「he will never make the Hall of Fame」に差し替えられたそうだ。
▽ジャズ好き
「素顔のままで」は間奏にアルトサックスのフィル・ウッズのソロが入って話題となり、この曲がジャズプレイヤーに取り上げられるようにもなった。ニューヨークといえばジャズ。ジョエルもジャズ好きから評価が高いが、本人も好きらしい。ザンジバルではトランペットのフレディー・ハバートが参加、間奏とエンディングで2度のソロを披露している。ジョエルはハバートと共演したことについて「自分にとって特別のもてなし、なぜなら僕はいつもジャズ演奏家に憧れてきたし尊敬し続けているんだ」とコメントしている。
検索は「Billy Joel Zanzibar」(了)