後始末の仕方で金一封(高田実彦=東京中日スポーツ)

いまから50年ほど前のオフのことである。
 日刊スポーツが「サンケイ身売り、ヤクルトが買収」と大きくぶちあげた。 
 朝寝坊の私は、昼ごろヤクルト球団の事務所に行くと、各社の記者が顔をそろえていた。読売新聞の長老、張江五さん(後の巨人広報部長)が、「遅いな」とひと言。

▽抜かれて真っ青

やっと事態の重大さを知った。「誤報」ではなく「特ダネ」だったのだ。「発表と記者会見は午後だ。それに間に合ってよかったな」
 そのヤクルトの松園尚巳新オーナーの記者会見。
 開口一番、「ずっと前に決まっとったんよ」とニコニコ顔でおっしゃった。

▽経済誌に着目

会社に上がる途中、本屋に寄って経済誌を手に取った。果たせるかな、あった。
「ヤクルト躍進の秘密」
 球団を買うのだから、きっと上昇気流に乗っている会社なのだろう、何か書いてあるだろう、と考えた通りだったのだ。
 その雑誌を買って近くの喫茶店に入った。そこに書いてあるデータをいただいて、松園オーナーの人柄や会社の紹介を書いた。
 その原稿が紙面に載った日、鬼デスクが褒めてくれた。
 「抜かれた後始末の仕方、秀逸だったぞ」
 2、3日後、“部長賞”と金一封をいただいた。(了)