プロ野球最高の選手は誰だ-クラブ員が選ぶベストナイン③

◎一塁手、二塁手部門

【出席者】司会・山田收(報知)、菅谷齊(共同通信)、露久保孝一(産経)、佐藤彰雄(スポーツニッポン)、高田実彦(東京中日スポーツ)、島田健(日本経済)、荻野通久(日刊ゲンダイ)、真々田邦博(NHK)小林達彦(ニッポン放送)、佐竹修仁(産経)

▽一塁手部門

山田 NPBでは王貞治を選出している。その他にも凄い選手がいる。一応候補者をリストアップしてみた。川上哲治、榎本喜八、大杉勝男、落合博満、R・バース。打撃の神様、求道者に三冠王が3人もいる。これは大変だ。
露久保 落合はプロ入り直後のポジションである二塁手としてで選ぶと、バランスが取れる。
高田 いや、彼はDHだろう。
佐藤 守備面も評価対象になると厳しいが、大杉は高く評価される。初の両リーグ1000安打も達成している。
菅谷 当時の東映は大杉、張本勲、白仁天を軸に打撃のチーム。5打者連続本塁打とか、破壊力満点だった。
露久保 榎本喜八。伝説のバッターですね。
菅谷 精密機械。スイングが全く狂わない。大毎のミサイル打線、その3番を担った。4番・山内一弘、5番・葛城隆雄のクリーアップ。あの田宮謙次郎が2番だった。
山田 どうしても打撃に目が向くが、守備面で取り上げたい選手は?
菅谷 松原誠。塁上での捕球体勢では股関節が柔らかく、両足が伸びてバレリーナのようだった。王と同時代だったのが悔やまれる。
荻野 2000安打は打っているが、タイトルとは無縁だった。でも王と違って、球宴でMVPを獲った。
山田 私が直接見た中では、山本巧児と駒田徳広。2人とも長身でミットさばきが柔軟だった。
菅谷 駒田は元々右打ち。それを左に変えた。だから大型選手にもかかわらず、長距離砲ではなく、コンタクトの上手い打者という感じ。

▽二塁手部門

山田 NPBは同じ受賞回数で、千葉茂と高木守道の両者を選出した。私は、千葉のプレーを見たことはない。右打ちが代名詞で連続右方向本塁打39本という、落合も達成できない記録を残している。どんなプレーヤーだったのですか、高田さん?
高田 川上さんが「私がファーストを守れたのは千葉のお陰だ」と言っていた。一、二塁間の打球はすべて千葉が処理して、自分は一塁ベースに付いていればよかった。
菅谷 千葉と言えば、右打ち。本人に聞いたら、走者を進めるために、右打ちを徹底して練習していたそうだ。打撃タイトルもあと少しで及ばなかった。
小林 いい加減というか、ゆったりとした構えから、鋭い打球を打っていた、という印象がある。
荻野 長嶋の背番号3が巨人の永久欠番になったとき、ミスター(長嶋)が「オレが3分の1かな」ともらした。中島治康、千葉両先輩をリスペクトしていたからだろう。
菅谷 もう1人の高木守道は絵になった。ハリウッドスターの雰囲気。まるでカモシカが動いているようだった。後ろ姿がきれい。
真々田 打撃成績もさることながら、特筆すべきは守り。ダブルプレーのときのバックトスは天下一品だった。
露久保 両者以外では、職人肌の2人に注目した。1人はあのイチローもその打撃に憧れた篠塚和典。もともとはショートだが、80年代を代表する二塁手。とにかく、バットコントロールの巧みさで2度首位打者を獲っている。もう1人は山崎裕之。彼ももともとはショート。勝負強い打撃が持ち味だが、1イニング2本塁打を2度マークしている。プロ野球史上2人しかいないはず。
山田 二塁手は他のポジションからコンバートされたケースが多い。二塁手での打撃成績のほとんどトップを占める立浪和義もそう。
露久保 現役だが、山田哲人が十数年後には、プロ野球史上最高の二塁手と称されるかもしれない。ここまでトリプルスリー3度はもの凄い。
島田 同じ現役で守り重視の視点からいえば、菊池涼介はどうか。とにかく守備位置が動くし、カバーする範囲は広い。配球と打球の読みでしょうね。
高田 三塁手は難しくない、と言われているからな。長く同じポジションを守っている選手は少なくなった。(続)