◎無観客ゲームの“三方一両損”
「オープン戦の72試合(2月29日~3月15日)を無観客試合とする」
プロ野球のコミッショナーはそう宣言した。新型コロナ・ウィルスの感染拡大を防ぐための英断で、むろん、球史初めての措置である。
オープン戦は大きな2つの狙いを持つ。一つはチームの公式戦に向けての調整。キャンプで行った練習の成果を試すと同時に、実戦での力をつける。もう一つは、キャンプ費用を稼ぐことだ。
とりわけ後者は経営に直結する。無観客ということは収入ゼロ、球場使用料は払うということになる。
赤字の穴埋めはどうするのだろうか。
考えられるのは、選手の年俸に響くことである。このオフは成績が良ければ、という従来の更改はできないかもしれない。
かつて「魔術師」の異名をとった大監督の三原脩は、
「選手の年俸は観客動員が反映されるべきである」
と語ったことがあった。
成績だけで判断するのではなく、観客数で人気度も併せて年俸を決めるのがプロ、という意見である。
三原は大学生時代から投資をしていたほどだから、経営にも一家言持っていた格の違う野球人だった。野球界では一流の論客だから説得力はあった。
興業の世界なら当たり前のことなのだが、プロ野球は成績のみで年俸が決まっていたといっていい。
もう一つ考えられるのは、公式戦、オールスター戦、日本シリーズなどポストシーズンの入場料に反映する可能性はあるだろう。テレビやラジオの中継料の上乗せ、球場内のグッズなどの値上げも予想できる。
異常事態とはいうものの、各球団が黙って無観客試合の赤字をそのまま飲むとは思えない。球団、選手、ファンに応分の負担を持つ“三方一両損”となるかも。
国がプロ野球の無観客試合の補償をするとは考えにくい。(菅谷 齊=共同通信)