第31回「ときめきよ永遠に」-(島田健=日本経済)

◎王貞治元監督に捧げる
▽王選手を知らない世代
 2008年(平成20年)に福岡ソフトバンクの王監督は勇退を決めた。
年末に発売されたDVD「HAWKS 2008ありがとう、王監督。14年間のホークス物語」のテーマソングとして、地元のヴォーカルユニット、ビーグルクルーが作ったのが「ときめきよ永遠(永遠)に〜ずっと忘れない〜」である。
作ったYASS(年齢不詳、現在4児の父)はもちろん、福岡生まれで大の野球好きだが、
「僕らは王さんの現役時代を知りません。ネットで調べたのですが、知れば知るほど王さんのことは一曲で語り尽くせそうになかった」
と語った。福岡県民に勇気を与えた監督・王のための唄であるのだが、715号フィーバーを知る世代としてはまさに隔世の感を覚えた。
▽ずっと忘れない
 「栄光や成功を刻んでもなお 忘れられぬときめきを 希望の光もそのチカラをちっぽけな僕に与えてくれた ただそこにいるだけで不安も消えてえしまうのに 永く見慣れ過ぎて当たり前がなくなって深く、深く永遠(とわ)に刻む背中もう一度…」
筆者世代の思いも見事に捉えたなかなかの詞である。
「勝つ為に勝ち続ける為に あなたにもらった希望ずっと忘れない」
09年放送の日本テレビ、「誰も知らない泣ける歌」でも紹介された。
▽ホークス選手との出会いがきっかけ
 05年に3人組でスタートしたビーグルクルーはまずメジャーではなくインディーズ(マイナー、独立系)でCDデビューした。福岡で路上ライブをしている時、当時ホークス二軍の川口容資、大田原隆太の2選手がCDを買ってくれた。
 2人が寮で聞いているのを、リハビリ中の斉藤和巳が聞いて気に入りブログなどで広めてくれた。これから、同球団の選手との交流が始まり、王元監督の曲を作るようになり、森福允彦(ホークスー巨人)などがビーグルクルーの曲を登場曲に選ぶようになっていった。
▽野球の唄アルバム
 斉藤和巳の引退の際は「道〜Route66〜」を贈った。
森福などの勧めで福岡を訪れた他球団の選手にも話が広がり、日本ハム・中田翔、ロッテ・涌井秀章の登場曲をオリジナルで書き下ろすようになった。書き下ろしでなくても、「Try again」は複数の選手が採用するなど、ますます野球と関係が深くなっている。歌詞自体、野球用具などはあまり出てこないが、堂々たる野球の唄である。
「ときめきよ永遠に」を含む野球の唄を集めたアルバム「CREWSING BASEBALL BEST」が20年6月に発売された。同ユニットは14年にJOYが去り、20年3月にはNARIが休業、YASS一人になってしまったが、まだまだ野球の唄を作り続けてくれそうだ。
検索は「ビーグルクルー ときめきよ永遠に」(了)