「セ・リーグDH採用で球界が変わる?」-(山田 收=報知)

第16回 セはDH制を採用すべし
 前回、大谷SHO-TIMEへ寄り道をしてしまったので、今回は本筋へ戻る。DH制を巡る様々な話題を取り上げてきたが、
「じゃあ、お前はセのDH制採用をどう考えるのか」
と問われそうなので、ここで宣言をする。私は導入に賛成です。
 論議の発端となった巨人・原監督の「セとパの力の差の原因にDHあり」という発言には、十分な納得はいかないが、両リーグのルールに差異がある状況を解消する意味でも導入はあっていいのでは、と考える。
 第12回で紹介した堀内恒夫氏の反対論を覚えているだろうか。
「時代とともに変わるものがある」と言いつつ「野球は9人でやるのが原点であり、それを守りたい。投手は投げて、打って、走るもの。投げるだけのDH制には反対」
という明確な拒否の論理だった。
 私が何故賛成か、といえば。
①ポジションが1つ増える。たとえ、それが打つだけでも野球の一部。野球はチームスポーツだから、先発メンバーだけでは、成立しない。野手でも、途中から出場する守備、走塁のスペシャリストがいるわけで、打つだけの専門家が先発で出ているということ。レギュラー枠が9人制より、1つ多いことで、出場のチャンスが与えられることになる。
 ②当然ながら“安全パイ”の投手がいないことで、打線の力は9人制を上回る。攻撃野球が楽しめると同時に、その打線と対峙することで、それを抑えるために投手力もまた向上する。力と力のぶつかり合いといった、ファンをワクワクさせるシーンも増える。
 攻撃的な野球を展開し観客動員増を目論んで、パ・リーグはDH制を導入した。この46年の間に、確実にパの野球は面白くなったし、人気もセに肉薄している。同時に、パは育成力を上げている。DH制がらみでいえば、先発10人目の野手を作ることが、球団には求められる。
これは現場だけの問題ではなく、チーム編成の課題にもなる。例えばDH用に外国人を獲得するなら、守備には目をつむって、長打力に焦点を合わせる。国内のアマ選手でも走攻守バランスのとれた選手だけでなく、一芸に秀でたプレーヤーもドラフトの対象になる…。
 野手だけでなく、投手に関しても早めの交代が考えられるので、層の厚さが必要。支配下選手70人に育成選手を含めた育成力が問われる。外国人獲得にかかる経費の高騰などを理由に、DH制導入に反対という球団もあるといわれる。DH制導入となれば、球団もドラフト、新外国人獲得など編成部門も対応に追われるに違いない。
 一方、心配があるのも事実。
セが導入した場合、プロ全体がDH制になる。現在数少ない9人制で実施している東京6大学野球とか、高校野球はその影響を受けないか、ということ。特に高校野球は昔から4番・投手がチームの中心であり、そこから大谷翔平も出てきたわけで、歯止めが必要か。(続)