「セ・リーグDH採用で球界が変わる?」-(山田 收=報知)

第17回 セはDH制を採用すべし②
 これまでは、セが何故DH制を採用しないか、という論理を展開してきた。前回で私は、導入賛成の立場を明らかにしたので、ここでは専門家たちの賛成理論を紹介したいと思う。
 トップバッター(本人は投手)は、2020年限りで現役を引退した藤川球児氏。歯切れのいい評論は評判だが、この問題についても明確だ。スポーツ報知の紙面から紹介する。
「セのレギュラーは8人。パはDH制だから、9人どころではなく、相手投手の左右でDHが変われば、10人の用兵が基本として組み込まれている。セは8番までに得点を取る構図があり、実際はクリーンアップトリオのところまでが得点のチャンス。セとパでは、リーグでの戦い方、野球の質、組織が違う」  
として、パ高セ低の現状を変えるためにもDH採用に100%賛成している。
 技巧派が成功しやすいセと違い、パに勝つには先発のパワーピッチャーが必要であり、さらに加えて、
「打線に9人の野手をそろえると総年俸も上がり、球団の企業努力が求められる」
と経営面への影響があることを理解した上で賛成論を展開している。
 今年(21年)3月、NHK-BSの野球ファン注目番組「球辞苑」が「指名打者論」を取り上げた。そのなかで同局のプロ野球解説者である宮本慎也氏は、 
 「レギュラーポジションが増えるわけだし、子供たちにとってもいい、と思っていた」
と語り、上原浩治氏は、
「ピッチャーの打撃はメーンじゃない。査定だって評価につながらない」
とドライに言い切った。
 自らもDHで出場経験があり、セ・パ両リーグでプレーした金村義明氏は、
「野手以上に投手の故障防止につながる。セではリードされている状況で序盤でも投手に代打を出さざるを得ないケースがあり、リリーフ投手の登板過多につながっている。DHを導入すれば、中継ぎピッチャーの故障が減る」
と投手陣、ひいては球団へのメリットを訴えた。
 現場の首脳陣はどう考えているのだろう。
セ理事会で巨人とともにDH採用に賛成だったといわれる中日。与田剛監督は、
「個人の能力を高めるうえで、DH制を採り入れることは賛成」
と語っている。息の抜けない強力な打線と対戦することによって、投手の技術、パワーが養われるというDH制のメリットに注目しているのだろう。
 一方で、9人制を残しながらの並立論を提案している方もいる。江本孟紀氏は、
「今季はセ、来季はパという具合にDH制を1年置きに交互にやるのはどうか」
と主張する。9人制を存続させることで、反対論者を融和させようというのだろうか。誰のプランだったのか定かではないが、シーズンの前半戦を9人制でやり、後半戦をDH制で実施する、というものもあった。
 私見を付け加えるなら、新制度を採用したら、未来永劫維持しなければならないわけではない。先ずやってみて、ファンが受け入れなかったり、デメリットが多いと判断したならば、元に戻せばよいのだから。(続)