第57回 デーゲーム(島田 健=日本経済)

◎真面目な野球の唄
▽二郎さんといえばアドリブ
萩本欽一と坂上二郎といえば、コント55号である。21世紀の若者は知るひとが少なくなったが、日本テレビ系の「コント55号の裏番組をぶっ飛ばせ」(1969ー70年)で、二郎さんと女性タレントが演じる野球拳に思わずチャンネルを合わせてしまった御仁も多かっただろう。ボケ役の二郎さんが台本をあまりにも完璧に覚えてしまうので、お客さんの反応が返ってイマイチと考えた欽ちゃんは、台本にない突っ込みをしたり、本無しでやったりしてジローさんの巧みなアドリブを引き出し、かつ楽しんだそうだ。
▽ストレート
広島育ちのロックバンド、UNICORN(ユニコーン)が二郎さんとコラボしたのがこの唄。1989(平成元)年9月にリリースされたこのシングルは「坂上二郎とユニコーン」名義である。前年に発表したアルバムの中の1曲をボーカルに二郎さんを迎えて新たに売り出した訳で、何とオリコンチャートで最高11位になった。
作詞、作曲とも同バンドのリーダー的存在である手島いさむで、曲はシタールを擬したシンセサイザーも使ったインド調で、ややスローで何となく怪しいムードも漂うが、歌詞はまさしく野球を描いた直球である。
▽はずれ主題歌
「つまらない朝 来そびれたユニフォーム」「出る幕のないベンチウォーマー」「約束通り 走り抜いたけど 届かない ねえ ジョー・ディマジオ」
スポーツの栄光よりむしろ影の部分に光を当てたような歌詞は、当初フジテレビ系のアニメ「名門第三野球部」のために作られたからである。同アニメの主題歌は残念ながら他のバンドのものが採用されたが、二郎さんを起用して大いに売り出そうと考えたようだ。
▽歌手としても才能あり
二郎さんは、早々とコンビ活動を休止した後も、歌手として俳優として活躍を続けた。「学校の先生」は約30万枚を売り上げたし、テレビ番組のテーマソング「風まかせ」も大いに唄われた。05年には、さだまさし作詞作曲による野球の唄、「必殺!人生送りバント」をリリースしている。さだまさしも野球好きとして知られているが、二郎さん(11年逝去)もきっと野球が好きだったに違いない。
検索は「デーゲーム 坂上二郎とユニコーン」(了)