「野球とともにスポーツの内と外」(44)-(佐藤 彰雄=スポーツニッポン)

◎「新時代構築に火花」~野球vsサッカー
 2022年12月1日-。同年の「ユーキャン新語・流行語大賞」(現代用語の基礎知識・選)が発表され、プロ野球ヤクルト・村上宗隆内野手の大活躍を象徴する「村神様」が大賞に選ばれました。同年にノミネートされた30語のうち野球関係は6語。その中からの大賞選出は、前年(2021年)の「リアル二刀流/ショータイム」に次ぐもの。2年連続の話題提供にプロ野球界は胸を張ったことでしょう。
 確かにこの22歳の若きスラッガーの存在は神がかっていました。“レジェンド”王貞治氏を超える日本人選手シーズン最多の56号本塁打、5打席連続本塁打、3冠王達成…誰からも異論が出ないほどの「2022年の顔」といえたでしょう。
▽揺らぐ「村神様」の座
 が、しかし、この「ワード争い」に後日、思わぬ強敵が現れ、独壇場と思われた「村神様」に「もし…」がつけられることになりました。ノミネートされた30語の決定が11月4日。締め切りが過ぎた同月下旬からサッカーのW杯(ワールドカップ)カタール大会で日本代表の世界を驚かす活躍が始まったのです。ドイツ、スペインと世界の強豪を撃破。「三苫の1ミリ」「俺のコース」「俺しかいない」(堂安)「ブラボー」(長友)「新しい景色」(森保監督)なとなど…まさに大賞候補の乱れ飛びです。
 日本に「Jリーグ」(日本プロサッカーリーグ)が発足したのが1993年(平5)年でした。スポーツ新聞制作においてまず、プロ野球の出来事を最優先させなければならなかった時代。そこにサッカーの切り込みは“歴史的”といっても過言でなかったでしょう。日本のサッカーは30年近くを経て世界と渡りあうことが出来るようになり、列島を揺るがせた評価も「サッカーはスゲー! 面白い」-。
▽野球をしのぐサッカー人気
「日本FP(ファイナンシャル・プランナー)協会」が2022年春、小学生を対象に実施した「将来なりたい職業」の調査によると男子は①サッカー選手・監督②野球選手・監督でサッカーが野球上回っていました。
 野球の巻き返しは2023年3月に開催される「WBC(ワールド・ベースポール・クラシック)」でしょう。今度は「俺のコース」(村上)「朗希の1ミリ」(佐々木)「新しい景色」(栗山監督)…といきたいものです。野球もサッカーも2023年は「既成を打破する」時代。それだけの顔も揃い、火花がバチバチ飛び交いそうです。(了)