「記録の交差点」(13)-(山田 收=報知)
◎第13回 佐々木朗希②
前回から2022年4月10日、ロッテ・オリックス3回戦(zozoマリン)で20歳の右腕・佐々木が演じた完全試合プラス19奪三振&13連続奪三振という快記録尽くめの試合に焦点を当てている。今回は27年ぶりのプロ野球タイ記録となった19奪三振を振り返るとともに、1995年4月21日のロッテ3回戦(千葉マリン)で金字塔を打ち立てた野田浩司(オリックス)の残した足跡とともに比較してみたい。
当然のように2人とも毎回・先発全員から奪い、19個目は対戦した最終打者だった。佐々木の場合、わずか105球だったことに注目する。19三振のカウント別内訳は0-2=5度、1-2=8度、2-2=6度、球数別では3球=3、4球=9、5球=5、6球=2と早めのカウントでの勝負が目立っている。
佐々木の105球の内訳を、当日のスコアブックを取り寄せて眺めてみると、見逃しストライク23、空振り24、ボール23、ファウル27、打球8。ファウル、打球をストライクとすれば、ストライク82、ボール23となり、ストライク率78%という高率になる。
これに対して、野田の19奪三振のカウント別は0-2=5、1―2=5、2―2=6、3-2=3、球数別では3球=2、4球=4、5球=10、7球=2、8球=1である。最後の8球は5回、フランコにフルカウントまでいった場面である。結果的に野田は9回38打者に対し、6安打4四球(うち2敬遠)を与えて162球で投げ終えた。全く走者を出さなかった佐々木とは比較にならないかもしれない。
野田といえば、93年4月21日の近鉄戦(日生)で15奪三振、同年7月4日の近鉄戦(ナゴヤ)で16、94年8月12日、やはり近鉄戦(神戸)で当時の日本タイ記録となる17をマークしている。15奪三振以上4度は、あの三振奪取王・金田正一に並び、16奪三振以上3度は野田しかいない。
三振へのこだわりを感じさせた投手だろう。「僕はゴロを打たせようと思ったこともないし、その術ももっていない。追い込んだら三振を狙う」と、自分自身のスタイルを語っている。ロッテ戦でバッテリーを組んだ中嶋聡(現オリックス監督)とは「追い込んだらフォーク」の方針を貫き、ほとんどの三振を元祖“お化けフォーク”で奪っている。
実は、この大記録達成には大ピンチがあったのである。3回2死一塁で4番・フランコは右翼ファウルゾーンへ打ち上げた。秒速8㍍の風に流された打球を名手・イチローがキャッチし損ねた。また、7回先頭・愛甲の一塁ファウルゾーンへのフライを今度は藤井康夫が落球した。ともに落球後、野田は三振に切ってとっている。もしも、フライアウトになっていたら、新記録は生まれていなかったかもしれない。
「記録を意識したのは、7回に16個目(五十嵐)を取ってから」と野田は話しているが、まだまだドラマが待っていた。=記録は24年6月26日現在=(続)