「大リーグ見聞録」(77)-(荻野 通久=日刊ゲンダイ)
◎野球選手はギャンブル好き?
▽競馬はスポーツ?賭け?
6月7日(現地)、ニューヨーク州サラドガ競馬場で行われた、米競馬三冠レースのベルモント・ステークスが大リーグ関係者の間で話題になった。勝ち馬の共同馬主が元メジャーリーガーのジェイソン・ワース(45)だったからだ。ワースは2002年にブルージェイズでメジャーデビュー。フィリーズ、ナショナルズなど、メジャーリーグで通算15年間、外野手として活躍(通算打率.267、229本塁打、799打点)した選手だった。
競馬は「キング・オブ・スポーツ」と言われ、馬主になる大リーガーも少なくない。ヤンキースで主軸を打ち、1980年から3年間、巨人でプレーしたロイ・ホワイトも競走馬を数頭、所有していた。馬主になることは日米を問わず、ステータスでもあるようだ。プロ野球でも佐々木主浩(評論家)、三浦大輔(ⅮeNA監督)、柳田悠岐(ソフトバンク)らがJRAの馬主として知られる。
競馬はスポーツでもあるが、同時に賭けでもある。ギャンブルとしての競馬好きは助っ人でも、プロ野球選手でもいる。1980年代後半に阪神で活躍した、マット・キーオとランディー・バースは大の競馬好き。関東地方に遠征、週末に競馬が開催されているのを知ると、ホテルからタクシーを飛ばして、2人で府中の東京競馬場によく出かけていた。
▽日本一決戦試合前にノミ屋に電話
今のように、携帯電話がなかったころの話だ。試合のある週末、後楽園球場(現東京ドーム)そばの場外馬券売り場で、選手から頼まれた馬券を購入するスポーツ用品会社の担当者をしばしば見受けた。お札を握りしめ、馬券の買い目を何度も確認する姿は滑稽、いや、真剣そのものだった。掛け金が半端な額ではなかったからだろう。
西武球場(現ベルーナドーム)での西武と巨人の日本シリーズの試合前、ベンチ裏の公衆電話で、馬券を買っている選手を目撃したこともある。会話の内容からして、ノミ屋に馬券を頼んでいる様子だった。日曜日だったので、大レースがあったのだろう。それにしても、大胆というか、無神経というか。
3月に大谷翔平の通訳だった水原一平の違法賭博が発覚。その後、エンゼルスで大谷と同僚だったデービット・フレッチャー、パドレスのトゥクラタ・マルカノらの違法賭博が明るみ出た。野球選手のギャンブル好きは、洋の東西を問わないようだ。
ちなみに私が選手にギャンブルの効用を聞くと、しばしば「勝負勘が養われる」との答え返ってきた。後付け、口実としか聞こえないが、さて。(了)