「いつか来た記者道」(76)-(露久保 孝一=産経)

中南米で日本のプロ野球中継を見る

 日本のプロ野球試合が、ラテンアメリカの国々でもテレビ観戦できるようになった。パ・リーグ6球団の試合が2024年6月から、ドミニカ共和国、ベネズエラ、コロンビアなどで放送されている。情報通信ネットワークのグローバル化は、経済産業をはじめ各分野で高度に進展し、地理的な距離を克服し、離れた場所であっても瞬時に情報をやりとりすることができるようになった。その流れはスポーツ界にも及び、日本のプロ野球の試合が地球の裏側でも見られるという時代が到来したのである。

 パ・リーグ6球団とパシフィックリーグマーケティング(6球団による共同出資)は24年5月、中南米・カリブ地域の野球専用チャンネル「One Baseball Network」(米フロリダ州)と契約を結び、同年のパ主催試合を放送、配信することになった。約40カ国・地域が対象で、最大約500万世帯の視聴を見込んでいる。週に3ー5試合を提供する。契約期間は24年6~11月の予定だ。パの主催試合は、すでに台湾と北米で放送、配信されているが、中南米に進出してさらにネットワークの拡大をめざす。

▽ポランコ、アブレイユ「母国のために頑張る」

 日本のプロ野球界では、昭和時代から中南米の選手がプレーしている。1980年代に、プエルトリコ出身のカルロス・ポンセ(大洋)、トミー・クルーズ(日本ハム)は好打者として記録を残した。2024年でも、カリブ海に面したドミニカ共和国出身のグレゴリー・ポランコ外野手(ロッテ)、C.C.メルセデス投手(ロッテ)、アルバート・アブレイユ投手(西武)、ベネズエラのアンダーソン・エスピノーザ投手(オリックス)らが活躍している。ポランコは23年、本塁打王になった。

 「日本でプレーしているわれわれの姿を、自分の国の人たちに見てもらえるのはとてもうれしい。大きな励みになる。家族、友人に喜んでもらうためにさらに頑張りたい」

 ポランコらは母国に届けとばかりに快打、快投をめざす。試合の放送であれば、当然、自国の選手を応援し日本選手のプレーを知り、日本の球場の美しさ、スタンドの熱心な応援風景も画面から伝わり、中南米において日本野球への関心はグンと高まりそうだ。中南米の野球少年たちは「大人になったら米大リーグでやりたい」と希望している者が多いといわれるが、日本の野球が好きになって日本のプロチームにあこがれる選手が一段と増えるかもしれない。 

 パ・リーグの試合が放送、配信される中南米・カリブの約40カ国と地域にはプエルトリコ、ドミニカ共和国、ニカラグア、パナマ、コロンビア、ベネズエラ、ペルーなどが入っている。ベネズエラ出身の選手はかつて、ボビー・マルカーノ(阪急、ヤクルト)、ロベルト・ペタジーニ(ヤクルト、巨人、ソフトバンク)、アレックス・ラミレス(ヤクルト、巨人、DeNA)らが大活躍した。その選手たちの時代は中南米で日本試合の放送はなかったが、ファンの間には「名選手」としての記憶が残っている。

 日本の野球視聴を通じて、中南米で日本への観光客が増えたり、日本のアニメや食文化への関心が高まり、電子機器など優れた製品の購入増につながることも考えられる。ラテンアメリカにおけるパ6球団の試合放送は、野球による日本文化産業PRへの貢献を果たすのである。(続)

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