◎ペナントレースの価値(菅谷 齊=共同通信)
球界のOBから強烈な意見を聞いた。多くの野球人が思っている疑問なので、捨て置くわけにはいかない。
「ペナントレースは予選なのかね」
これは現在のポストシーズンのあり方を指摘したものである。ペナントレースの上位3チームで日本シリーズ出場権を争う現状を納得している野球人がどれほどいるか。
ペナントレースを制しても、2位あるいは3位チームに敗れてしまうと、日本シリーズには出られない。勝率5割程度でも2位と1位チームに勝てば日本シリーズに出場して日本一になれる。
日本シリーズはいうまでもなく日本一を競うプロ野球最高のイベントである。それなのにリーグ3位チームがその座に就く可能性を持つ制度は、どうしても「いかがなものか」と思うのは当たり前だろう。
2010年、パ3位のロッテ(西村徳文監督)が2位西武、1位ソフトバンクを破って日本シリーズに出場、セの中日(落合博満監督)に4勝2敗1分けで勝ち、日本一になった。メディアはそれを「下剋上」と表現し、大きな話題となった。ペナントレースでのロッテは75勝67敗2分けで、セ1位の中日は79勝62敗3分けだった。
ファンにとっては面白い結果だっただろうが、プロ野球のリーグ戦としては首をかしげたくなる現象だったことを忘れてはならない。だから「ペナントレースは予選会か」との声が球界内で出るのである。
ペナントレースは143試合を戦う。3月末からのロングランであり、真夏の猛暑を勝ち抜いてくる。今年のセ・リーグのように最終盤まで首位を争うドラマは、だれもがその価値を認めるだろう。
ペナントレースを制しても短期のポストシーズンで敗れ、日本シリーズに出場できなければ、ロングランの苦闘が吹き飛んでしまう。ペナントレースと日本シリーズは別個であるという現在の理屈は理解しづらい。
かつて球界OBが16球団を提案して話題になったことがあった。4球団増やして1リーグ8チームとすれば、ポストシーズンの形がよくなることが根底の考えにあったと思う。東西地区制度を導入すると、1地区4チームとなり地区1位同士がリーグ1位を争うことになり、大リーグの制度に近くなるから誰もが納得すると思われる。
大リーグはエクスパンション(球団拡張)を着実に実行し、それに地区制度を東西から東中西に広げた。それに伴いチームがリーグを移るという荒業もやってのけ、現在に至っている。ペナントレースの価値を十分理解したうえで大リーグは半世紀もかけて今日の繁栄を築いている。(了)