「記録の交差点」(18)-(山田 收=報知)
◎第18回 佐々木朗希⑦
前回に続き、奪三振率の話題をお届けする。
このシリーズの軸に置いてきた佐々木朗希が、噂通り、ポスティングで米球界を目指すことになった。5年目を終えてからのメジャー挑戦は、大谷翔平と同じ。年齢制限からひとまずマイナー契約となるので、送り出すロッテにとっては、財政的なメリットは余りない。
誰でも思うことで、入団時からの❝約束❞があったのでは、と勘繰ってしまう。繰り返し書いてきたことだが、せめてあと1シーズン日本球界で規定投球回数(143回)をクリアしてから行って欲しかった…。
さて今回は、通算奪三振率のお話です。これもまた、投球回数の基準があり、通例適用されている2000回とした。トップは杉内俊哉(2002~2018)。2091回1/3で2156個の三振を奪い、奪三振率は9.28。杉内といえば、カーブ、スライダー、チェンジアップを巧みに組み合わせ、狙って三振を取れる左腕だった。冷静な駆け引きを見せたかと思えば、2004年6月1日のロッテ戦でKOされ、ダグアウトの壁を殴りつけて両手を骨折する激情ぶりを見せた。この年わずか45回2/3で2勝3敗に終わったが、翌05年218、08年213、09年204、10年218と4度のシーズン200奪三振以上をマーク。まさに奪三振マシンだった。
2位は石井一久で奪三振率8.84(2153回1/3・2115K)
以下③江夏豊8.41(3196回・2987K)
④和田毅8.15(2099回2/3・1901K)
⑤川口和久7.81(2410・2092K)
お気付きだろう。上位はすべて左腕投手である。6位も工藤公康7.71が続いている。ちな
みに現役では(2000投球回をクリア)岸孝之(楽天)の7.51が最高で歴代右腕の最上位につけている。
実は日本人で彼らを凌ぐ投手がいる。サンディエゴ・パドレスのダルビッシュ有である。日本ハム時代(7年間)は、1268回1/3で1250K。奪三振率8.87だったが、MLB移籍後は12年間1706回を投げ、2007K(日本人初の2000奪三振)。なんと奪三振率10.59をマークしている。日米通算では、9.85(2974回1/3・3257K)となり、杉内を上回っているのだ。参考記録ながら、3257は、金田正一(4490)、米田哲也(3388)に次ぐ記録である。
MLBに移籍した投手には、日本で10.31(1051回1/3・1204K)という驚異的な奪三振率を記録した野茂英雄がいる。メジャーでは8.73(1976回1/3・1918K)とやや数字を落としたが、日米通算では9.28(3027回2/3・3122K)と高レベルの数字を残している。
この2人と日本球界との比較はできないが、ダルビッシュが、MLB移籍後、さらにレベルアップしているのは明らか。2024年シーズンでは、5月19日ブレーブス戦で日米通算200勝(その後黒田博樹に並ぶ203勝)の金字塔を打ち立てた。パドレスとは42歳となる2028年までの契約が約束されており、まさに息の長い投手となっている。今後、佐々木朗希が果たしてどんな姿を見せてくれるのか。先人たちの後ろ姿を追いかけてもらいたい。=記録は2024年シーズン終了時点=(続)