「菊とペン」(58)-(菊地 順一=デイリースポーツ)
◎最悪だった日本シリーズとは…
今年もあと1カ月で終わりである。で、いまだに釈然としないのが今年の日本シリーズだ。
巨人に8・5ゲーム差の3位・DeNAがCS(クライマックスシリーズ)で巨人を退けてシリーズに進出、ソフトバンクを破り日本一である。
下克上と簡単に言うが、長いシーズンを戦い抜いてリーグ優勝した巨人の重みはどこへ行ったのか。おかしい。
シリーズを振り返って、別な意味で最悪だったのは05年の阪神対千葉ロッテである。
阪神は岡田彰布監督の2年目で20年ぶりの日本一を目指した。ロッテはバレンタイン監督で31年ぶりにパ・リーグの覇権を握った。
共通しているのは90年代「万年Bクラス」である。盛り上がった。特に関西方面はすごかった。
本社は神戸であり、東西ともに阪神の報道が売りである。(いまも変わらない)シリーズを前に幹部から呼ばれた。
「日本シリーズのチケットを取れるだけ取ってほしい」
各方面からチケットが欲しいとの依頼が殺到していた。割り当て枚数では到底足りないという。
そんなこんなでかなり苦労した記憶がある。記者たちの協力もあり、結果はまあ、なんとかなったのである。
ところが、シリーズはロッテが怒涛の4連勝だ。しかも4試合で33(得点)対4(得点)の一方的な圧勝劇である。
この33対4は阪神の黒歴史として、いまだに語り継がれている。
結果にガッカリだ。阪神日本一狂騒の夢はアッケなく消えた。第5戦以降のチケットはパ―だ。なんのために苦労したのか。手元に第6、7戦のチケットがドッサリあった。
このシリーズ、千葉マリンでの第1戦は7回途中までにロッテが大量9点をリード、ここで球場を包んでいた霧が濃くなり、濃霧コールドゲームでロッテが先勝した。
千葉マリンは強風が名物だが、この時は日中の雨で湿度が高く、北と南からの風がぶつかって霧が発生、異常気象からか風がなかった。
まるで煙みたいな霧が球場全体に広がっていた。濃霧コールドは公式戦で4度あるが、50年から始まった日本シリーズでは55年目にして初の珍事だった。
「こりゃ、悪霧が呼んだ惨敗だな」と思っていたが、結果として「悪霧が呼んだ悪夢の4連敗」となってしまった。
打力の差は歴然としていた。そして岡田の阪神には時の運もなかった。
岡田監督は今年、「アレンパ」はならず退任したが、自ら「宿題となった」と話した悪夢の4連敗を18年後の23年に、キッチリ晴らしている。
MVPに輝いた今江敏晃はその後、楽天に移籍し、今年指揮を執ったが、4位に終わり、わずか1年で退任となった。
さて、来年の日本シリーズはどうなるのだろう。いまから待ち遠しい。
最後に一言。制度とは言え、今年のような下克上はゴメンである。(了)