「記録の交差点」(19)-(山田 收=報知)
第19回 宮西尚生①
これまで、坂本勇人、中村剛也、佐々木朗希という現役のプロ野球記録保持者を取り上げてきた。彼らを軸として、足跡や、今後視野に入ってくる記録、また目指すべき偉大なプレーヤーやその記録にまつわるエピソードなどを紹介してきた。本塁打や奪三振など、いわゆる派手なジャンルを取り上げることが多かった。年も改まり、今回のシリーズでは、視点を少し変えてみようと思う。
タイトルにあるように、このシリーズの主人公は宮西尚生投手(日本ハム)。彼が持つプロ野球記録は412ホールド(H)。現在のホールド規定ができたのが2005年で、まだ歴史の浅い部門ではある。2024年シーズンで、ちょうど20年を終えたことになる。
ホールドは中継ぎ投手のひとつの指標だといえる。簡単にいうと、自チームが同点、またはリードしている場面でリリーフをして、その状況を保ったまま次の投手に引き継いだ場合に与えられる。勝利・敗戦・セーブにならない投手が対象となるが、チームが敗戦となってもホールドが付く場合がある。
毎日のようにベンチ入りして、チームを支える投手へのご褒美か。ホールドと救援勝利をプラスしたのがホールドポイント(HP)。シーズン最多のHPを記録した投手に贈られるのが最優秀中継ぎ投手賞だ。ちなみに2024年は、セ・リーグが桐敷拓馬(阪神)、松山晋也(中日)で43HP、パ・リーグが河野竜生(日本ハム)で34HPだった。今回、取り上げる宮西は、岩瀬仁紀(中日・1999~2018)、山口鉄也(巨人・2007~2017)とともに、最多となる3度の受賞歴がある。
宮西がルーキーの2008年から17シーズンにわたってマークした412Hという数字。2位の山口が273Hだから、まさにぶっちぎりのトップだ。但し、ここで山口の凄さも伝えなければいけないだろう。2008年から9年連続60試合登板はプロ野球記録であり、その間、中継ぎだけでなくクローザーとして、セーブもマークした鉄人だった。横浜商高から米マイナー4シーズンを経て、育成ドラフトで巨人入りした異色の経歴の持ち主でもある。
さて、宮西は25年も現役続行で、6月には40歳となる。ホールドの申し子がどこまで数字を伸ばしていくのか楽しみではあるが、精神も肉体もタフでなければ務まらないのが、
セットアッパーである。2008年から14年連続50試合以上登板(パ・リーグ記録)している宮西は、その間、6シーズンで30H以上を残した。まさに縁の下の力持ちだ。
積み重ねた登板数は869で、すべてリリーフ。最多連続救援登板は、前出のもう1人の鉄人・岩瀬が持つ879だ。宮西が故障なくシーズンを乗り切れば、あと10の救援登板でプロ野球記録に並び、900の大台も見えてくる。
その宮西が「大きな目標」としているのが、岩瀬が持つ最多試合登板(1002)のプロ野球記録だという。登板数とホールドをかけて、鉄人サウスポー(そういえば、先輩の2人も左腕投手ですね)が、18年目のシーズンにトライする。=記録は2024年シーズン終了時点=(続)