「野球とともにスポーツの内と外」(70)-(佐藤 彰雄=スポーツニッポン)

◎プロ野球の時短対策ついて
プロ野球界は3月の声を聞いてキャンプからオープン戦へと移行します。それにしても…何ごとにも便利なアプリを備えたスマホの普及がその一端を担っているのでしょうが、とにかく近年、世の中の流れの速さを感じます。まさにワンクリック、即断即決で次々に先に進むスピード感。それを当たり前として「タイパ」を重視する若い世代してみれば「3時間超え? そりゃ長すぎる。我慢できない」ということになってしまいます。
【タイパ】=タイムパフォーマンス。時間対効果。費やした時間に対する満足度を示す言葉。長い時間を費やしても満足度が得られないときなど「タイパが悪い」と言う。
▽長い3時間超え
やり玉に上がった「3時間超え」は、プロ野球の試合時間です。資料によると日本のプロ野球の試合時間は、だいたい3時間超えがデータに記されており(データでは3時間10分前後で推移しています)その内容ついても、投手交代の多さや投球間隔の長さなどが余計な時間を費やし、どうにも「タイパが良い」とはいえない状況にあるようです。実際、人気度で野球を凌ぐようなったサッカーは前・後半各45分で計90分の勝負。ラグビーしても前・後半各40分の計80分。いずれも見頃な時間の範囲内にあり、何よりも観客にあきる間を与えない動きの激しさを見せています。
アメリカンフットボールやバスケットボールに押され気味のMLBは、その危機感からか近年、ファン離れ阻止に向けてさまざまなルールの変更がなされています。投球間に時間制限を設けるピッチクロックの導入。牽制球は3度目までにアウトしなければボークとなる回数制限。延長戦おけるタイブレーク制もMLBでは延長10回から「無死二塁」で始めるルール…など時短対策の実施です。
▽ダラダラを回避する
興味はアメリカがひいた風邪に日本がくしゃみをするかの問題、これらの対策をNPB(日本野球機構)が受け入れるかどうかの問題ですね。とともに新たに議題に載せられたのが、長い? ならばバッサリ切ってしまえ! であるかのような、日本高野連よる「7イニング制」の議論です。提案の発端は、真夏の甲子園で戦う高校生たちの健康管理。この案がさすがにプロ野球界にまで及ぶことはあり得ないにしても、この種の時短対策は野球というゲームの根底を覆してしまいますね。
例えばプロホクシングの世界戦12ラウンド。ヤマ場が来るのは、だいたい選手の疲労が蓄積する中盤(6~8ラウンド)の攻防です。野球なら5~7回あたりの変化、流れの奪い合いでしょうか。この中盤なくしてゲームの醍醐味は失われてしまいますね。もともと日本の野球の面白さは“駆け引きの妙”にあります。心理戦、神経戦…であればピッチクロックも牽制球の制限もあてはまりません。そんなことをしなくても、最大の敵である、無用なものに時間をかける“ダラダラ”を回避できれば、野球が見直されるかも知れませんね。(了)