「大リーグ見聞録」(86)-(荻野 通久=日刊ゲンダイ)

◎アップする大リーグ監督の年俸
▽年俸10億円が3人?
ドジャースのデーブ・ロバーツ監督が来年(2026年)からの4年、契約を更新した。現地3月10日(日本時間11日)、ドジャースが発表した。
4年で総額3240万ドル(約47億6300万円)。総額では及ばないが、年間810万ドル(約12億円)はカブスのクレイグ・カウンセル監督(5年で総額4000万ドル)を抜いてメジャートップだ。今季の年俸は325万ドル((約4億9000万円)。大幅なアップを勝ち取ったことになる。
もう一人、大型契約を結ぶと見られる監督がいる。ヤンキースのアーロン・ブーンだ。2月20日に来季から2年の契約延長が公になり、2027年まで指揮を執る。現在の年俸は330万ドル(約4億9500万円)。まだ詳細は明らかになっていないが、新契約では倍増もと話題になっている。
ロバーツ監督は過去9シーズンで851勝(507敗=勝率・627)。8度地区優勝、2度ワールドシリーズ制覇。ブーン監督は過去7年で603勝(429敗=勝率・584)。6度プレーオフ進出。就任1年目からの7シーズンで6度、チームをポストシーズンに進めたのはこの2人だけだ。
3人の年俸を見ると、MLBの監督の高給取りのように思えるが、実際には異なる。2024年度の平均年俸は250万ドル(約3億75007ドル)。2億円以下の監督も半分近くいた。
▽プロ野球監督との違い
理由のひとつはシステムにある。プロ野球では生え抜きのスター選手が監督になるケースが多い。今季から指揮を執る阪神・藤川、西武・西口監督を含め、多くが該当する。いずれにしろ、一軍監督としては何の実績がなくても、球団が1億円前後の年俸を払うのは、現役時代の”看板料”込みだからだろう。
MLBでは選手としての実績や生え抜きか否かは関係がない。
今年、30チームの監督のうち、実に12人がメジャーでプレーした経験がない。ナ・リーグ東地区に至っては、5監督のうち4人が現役時代はマイナー止まりの選手だった。マイナーリーグのチームで、指揮官としてスタート。2A、3Aでコツコツと成績を残し、メジャーに昇進して指揮を執るのが一般的だ。メジャーでは何の実績がないのだから、球団も高い年俸は払わない。あくまで成績を残してから、である。
巨額の年俸を手にするロバーツ、ブーン両監督にも危機があった。ロバーツ監督は昨年、パドレスとの地区シリーズで敗退すれば解任と言われた。ブーン監督も2023年、初めてポストシーズン進出に失敗、交代説が飛び交った。名門、人気球団ゆえとも言えるが、厳しい世界でもある。
ちなみにプロ野球の団にはよくある「監督交際費」はMLBでは聞いたことがない。(了)