「スポーツアナウンサーの喜怒哀楽」(17)-(佐塚 元章=NHK)

◎新ルールは慎重に
 創設100周年を迎えた東京六大学野球は2026年の春のリーグ戦からDH制を導入すると発表した。社会人野球はすでにDH制を取り入れている。プロ野球(NPB)ではパリーグ、交流戦のパ本拠地で実施され、DH制のルーツ、メジャーリーグ(MLB)は両リーグともDH制でおこなわれている。日本高校野球もDH制や7イニング制導入の検討を始めている。まさに「新ルール導入」に急ピッチという感じなのだ。
 ここ数年のプロアマの新ルール採用、ルール新設、導入検討中の動きを思いつくままに振り返ってみた。
① ホームベース上のコリジョンルール新設
② ピッチクロック
③ ベンチ入り選手を増やす(高校野球23年から20人)
④ビデオ判定導入リクエスト採用(NPB。東京六大学は25年春から)
⑤高校生投手の球数制限(1週間500球)
⑥タイブレイク方式(高校野球。大学選手権も導入)
⑦7イニング制
⑧夏の甲子園高校野球、試合開催の2部制
ざっと思い出しただけでも、こんなにある。それぞれの立場から議論したら、大混乱は必至である。なぜ、こうした動きがでてきたのか? 議論の軸は何かを考えてみた。
 ①選手の健康管理 ②教育的配慮 ③野球の歴史、本質に矛盾しないか ④国際試合の対応 ⑤社会環境に適した競技、大会運営。以上の5つに集約した。
例えば、高校野球DH制導入は、②の教育的配慮からは多くの選手に出場機会が増えてよいのではないか。特徴、長所を生かすという観点から教育的にも好ましい。③野球の本質は「投げて、打って、捕る」という動作のスポーツであるから、「打つ」だけでは不十分ではないか。以上のような議論が考えられるだろう。他の新ルールも5つを軸に議論してほしい。
 私は、ルールは「金科玉条のごとく守れ」とはいわない。時代に即した変更も必要だ。しかし、ルールには歴史がある。「四球」「3アウト」「9回」になった経緯も野球史の貴重な遺産だ。また、「記録」の連続性を捨ててしまうのは余りにも残念である。ルール改正は保守的であって当然だと思う。野球は米4大プロスポーツの中で唯一、タイムスポーツではない。野球は考える時間を楽しむが故に「thinking Baseball」というすばらしい言葉がうまれました。新ルール導入もじっくり「thinking rule」とありたいものである。(完)

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