「記録の交差点」(35)-(山田 收=報知)
◎第35回 田中将大①
これまで、先人達の作り上げたアンタッチャブルな記録についても、触れてきた。投手編でいえば、金田正一が保持するNPB通算記録、例えば400勝、4490奪三振、365完投、5526回2/3投球回は代表的なもの。他にも藤本英雄の防御率1.90や岩瀬仁紀の1002登板などが挙げられる。
シーズン記録では、ビクトル・スタルヒンと稲尾和久の42勝、江夏豊の401奪三振、別所昭(毅彦)の47完投、林安夫の541回1/3投球回。岩瀬を除けばすべて昭和時代に達成されたものだ。現在の野球では、とても記録更新は望めないだろう。
今シリーズで取り上げる田中将大が躍動した2013年。彼が残したシーズン無傷の24連勝、前年から28連勝は、平成に生まれた超人記録と思えるのだ。快投に加えて、チーム創設9年目・楽天の初リーグV、日本一に貢献した。野球ファンにとって思い出深いシーズンだったろう。
私事ながら、当時新聞社の制作局という部署に所属していた筆者は、田中の活躍ぶりをニュースなどでは見ていても、編集局時代のように、そのプレーぶりを余り記憶していない。そこで、今シリーズは、改めて数字から見たマー君の凄さを感じながら、彼が浮かび上がらせた先人たちの姿を掘り起こそうと思う。
今から13年前のシーズンの田中の投球を簡単に振り返ってみる。28試合登板、24勝0敗1セーブ、完投8(完封2)、投球回212、被安打168、与四死球35、奪三振183、暴投9(意外に多い)、失点35、自責点30、防御率1.27、被打率.218。獲得タイトルは最多勝、最優秀防御率、最高勝率の3冠。加えてMVP、沢村賞、ベストナイン、ゴールデングラブ賞に選ばれ、まさにマー君の年だった。
月間別の成績をみてみると、防御率では、6月=0.28、7月=0.77、8月=0.95と覇権獲得の絶対条件といわれる夏場に、驚きの数字を残している。しかも6、7月の被打率は1割台である。降板までの投球回に味方打線が挙げた得点を9イニングに換算した援護率でいうと、3,4月=8.13、5月=4.72、6月=5.45、7月=5.03、8月=6.30、9月=5,76、10月=11.57と味方打線のバックアップが目立つ。もともと相手を2点以下に抑えるのだから、負けないのも当然と思えるのだ。
シーズントータルで2981球を投げたこの年。リーグ優勝を決めた9月26日の西武戦でリリーフ登板(セーブを記録)したのを除けば、27回先発して、投球回は6が1度のみ。あとは7以上で、1試合平均投球イニングは7.81回。自責点3はわずか2度で、残りはすべて2以下である。すべての試合でクオリティースタート(6回以上投げて自責点3以下)であり、「田中が投げれば、勝てる」のムードが漂う。
2ケタ被安打が2度しかないのも安定性を感じさせるし、2本以上の被本塁打は1度(6月22日・ロッテ戦=郡山)しかない。やはり、打たれていない。“難攻不落”のピッチャーだったのだろう。この年を含めて3年連続防御率1点台は、その証明ともいえる。ここまでがイントロダクション。
次回からは、田中の連勝記録の過程をなぞりながら、彼に記録を破られた男たちも追いかけてみる。=記録は2026年4月27日現在=(続)
