「勝手にスポーツコラム」(6)-(船原 勝英=共同通信)

◎メイズと比較された大谷
 ドジャース入りして初めて本格的な投打二刀流に取り組んでいる大谷翔平が、偉大なウィリー・メイズ(2024年6月没)と比較されている。MLB入りした大谷は常にベーブ・ルースと比較されてきたが、二刀流の物珍しさを超えて投打で高いパフォーマンスを示し続ける「ユニコーン」への評価がさらに高まってきたのだろう。ドジャースのライバル、ジャイアンツの地元紙「サンフランシスコ・クロニカル」が、チームのレジェンドでMLB史上最高のボールプレーヤーとされるウィリー・メイズと並べて比較しているのだ。
歴代6位の660本塁打(安打数は12位の3293本)の打力と、圧倒的な守備範囲の広さ・強肩で知られるプレーヤーと、大リーグ9年目でキャリア道半ばの大谷と比較したこと自体が驚きだ。しかも、ライバルチームのドジャースに移籍して輝きを増している、31歳の投打二刀流選手を俎上に上げていることも。
同紙のブルース・ジェンキンス記者は、過去の圧倒的な打撃成績と併せ、大谷が“史上最高”レベルの存在であることに「もはや疑問の余地はない」と最大級の賛辞を送っている。その上で、大谷を野球界の「マウント・ラシュモア」(米国の偉大な大統領4人=ワシントン、ジェファーソン、ルーズベルト、リンカーン=を彫刻したサウスダコタ州の岩山)へ押し上げるべきと持論を展開する。
その4人とは、ホームラン時代を切り開いたベーブ・ルース、黒人参加で社会を変えたジャッキー・ロビンソン、そして最高のボールプレーヤーであるメイズとともに、二刀流で野球を真に極めた大谷を、球界で最も偉大な4人に選出するべきだと強調している。
米国の記者たちが大谷翔平に向ける視線は特別なものがあると感じる。2018年に新人王を獲得した際、ヤンキースのミゲル・アンドゥハーが打率2割9分7厘、27本塁打、92打点の好成績を挙げていた。打者で22本塁打、投手で4勝の大谷への注目度は高かったとはいえ、規定打数、規定投球回数のどちらにも届いていなかった。人気チームのアンドゥハー優勢と見えたが、ふたを開ければ、大谷が1位票の30票中25票を獲得し、137ポイント対89ポイントの大差で選出された。
1919年のルース以来の「15本塁打&50イニング登板」や、史上初の「20本塁打&50奪三振」などの投打二刀流の革新性を高く評価した。日本で記者投票すればどうなっただろうか。規定の打席、投球回に届いてないことが、評価を下げたのではないかと思う。日米の社会のありようも異なるので、微妙なところだ。
ジェンキンス記者は、野球における5つのツールで大谷とメイズを詳細に比較。打撃や長打力、走塁、守備、送球のほか、通算成績の持続力や歴史的な好守(ワールドシリーズでの奇跡的な背走キャッチ)などを理由にメイズを上位に置いている。
歴史的なプレーでいえば、大谷も負けていない。昨年のポストシーズンでは投打出場での先頭打者本塁打を放っているし、今季も登板2試合で連続の先頭打者本塁打を記録している。史上初の「50・50」を達成したマーリンズ戦の爆発や、ダブルヘッダー第1試合で完封勝利を挙げ、第2試合で複数本塁打を放った23年のタイガース戦など、決して引けを取らない。
これら大谷の圧倒的な働きにも言及しつつ、全体としては地元チームのレジェンド中堅手の偉大さアピールしている。ただし、メイズにはない大谷だけの特別な能力も指摘。野手としての5ツールに加え、防御率0.82を記録する現状を踏まえ「歴史的レベルの偉大な投手でもあるからだ」と、6つ目のツール、インタンジブル(数値化できない要素)を持っていると分析する。
さらに、両者の対照的な人間性や魅力についても言及する。メイズが闘争心を表に出す類を見ないショーマンで、華とリーダーシップを備えていたと回顧。それに対し、大谷については「紳士としての品格通り、一貫して物静かで、礼儀正しく、謙虚だ」と、グラウンド内外で見せる振る舞いを大絶賛している。
「史上最高は一人だけ」という究極の命題に対し、5ツール比較ではメイズを“史上最高のボールプレーヤー”としつつも、最終的には「オオタニとメイズのどちらかを選ぶ必要はなく、ただそれぞれの違いを認識すればよいのだ」と提言、比較を超えた最大限の敬意を示した。時代を彩る不世出の才能に対して「両者を見ることができた人たちは、なんと幸運なのか」と惜しみない賛辞を送っている。(了)

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