「いつか来た記者道」(97)-(露久保 孝一=産経)

◎悲し、新聞消えて「スマホ電車」に
 電車内の風景が、がらりと変わってから久しい。21世紀に入るまで、朝の電車のなかはスポーツ新聞を読む人が半数を占め、一般紙を読む人も多かった。他人に迷惑をかけないように、みんな器用に折りたたんで紙面に目を通していた。夕方は夕刊紙が読まれ、新聞を手に寝入る人も多くいた。
そんな「新聞電車」が、2010年頃に携帯電話が普及し新聞読者が激減する。20年に入ると、スマートフォンを見つめる人に占領されるようになる。電車内で新聞や雑誌を読む人は珍しく、いま「スマホ電車」と呼ばれている。駅の売店にはかつて、スタンドに新聞が山積みされ週刊誌、月刊誌が並んでいたがほとんど姿を消してしまった。
2026年のメディア状況は次にようになっている。全国紙は読売、朝日、毎日、日本経済、産経の5大紙で、北海道新聞、中日新聞(東京新聞含む)、西日本新聞の3大ブロック紙と地方紙が126紙ある。スポーツ紙はスポーツ報知、日刊スポーツ、サンケイスポーツ、スポーツニッポン、デイリースポーツ、夕刊紙は東京スポーツ、日刊ゲンダイで大阪では大手新聞社夕刊以外に独立系夕刊専門紙は存在していない。
 駅売店から新聞、雑誌が大幅に撤去されるようになったのと同じ時期に、新聞、雑誌の休刊が相次ぐ。2022年以降、北海道新聞社の道新スポーツ、西日本スポーツ、大阪日日新聞が休刊し、25年に東京中日スポーツ、夕刊フジが発売を停止し、26年になり月刊誌『ダ・ヴィンチ』が11月号を最後に休刊する。『ダ・ヴィンチ』は最新の小説、文庫やコミックを紹介し読み継がれる名作を取りあげて、本の興味を幅広く伝えている。話題の作家、俳優、映画・ドラマ監督を特集しユニークな記事が読者に支持されているだけに、ダ・ヴィンチよ、お前もか、との声が出ている。
▽現場の生の情報を伝えるのは新聞だ
 新聞、出版界の紙媒体に共通しているのは、インターネットやスマートフォンが普及して紙媒体の分野に侵入しニュース・情報を奪ってしまっていることが大きい。これらWebメディア利用者は、早く簡単に情報を得ることができ、紙媒体を「読まなくてすむようになった」。
昭和、平成後期までは野球試合の分析、選手コメント、裏話などサイド記事を読みたくてスポーツ新聞や一般紙のスポーツ面が読まれたが、その現場の生の姿を伝える記事の魅力が減少し、形骸化して、Webメディアの速報性に屈するようになってしまった感がある。
 AIが進化するなか、かつてそうであったように、新聞記者はスポーツ競技の現場で当事者を取材してその場の雰囲気を生々しく伝える「得意技」を徹底して推し進めて記事にすることがいま問われている。その取材記事は、AIにはできないことだ。新聞の魅力を改めてアピールして、離れていった読者を新聞に戻し、車内で読む人を増やし、駅売店スタンドに置いてもらう。夢のような話かもしれないが、スポーツファンに愛される真に面白い記事は新聞でしか作れないものも多い。新聞復活の機運を盛りあげたいものである。(続)

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