「スポーツアナウンサーの喜怒哀楽」(31)-(佐塚 元章=NHK)
◎町復興のために…多様な高校野球の姿
6月中旬から7月いっぱい、私には全国の高校野球地方大会の動向を注目する楽しい季節である。近年、朝日系列のバーチャル高校野球というネットで地方大会の1回戦からすべての試合が見られるようになった。
私は、母校はもちろん、自分の任地の学校、甲子園でかつて放送した学校を観戦する。6月下旬には甲子園で1回だけ実況した南北海道、津軽海峡に面した町立知内高の後援会に招かれ、懐かしいメンバーと再会した。アナウンサー冥利に尽きるありがたいことだった。
さて2026年の大会は全国の3363チームが参加したが、私は次の2校に注目していた。ともに春の県大会で初優勝し、夏は優勝候補、学校経営も共通しているチームである。
まず、徳島県立海部(かいふ)高校。太平洋に面した県南部、海陽町にある。人口は7200人余り。2004年、周辺の海南、日和佐、宍喰商業が合併して海部高となった。海南といえば尾崎将司投手を擁して1964年選抜で優勝、OBには阪急の上田利治監督もいる強豪校だった。公費で合宿所をつくり、監督には日和佐OBで元日通、西部ガス、東洋大監督の杉本泰彦さん(66)をUターンさせた。実は杉本さんの高校時代を私は初任地徳島で張り切って実況した。県教委は県外からの入学を認め関西、関東からも生徒を集めている。町民も新鮮な野菜や魚を提供するなど地域と一体となって応援している。
もうひとつは三重県立昴(すばる)学園である。県中部、山林に囲まれた多気郡大台町にあり、環境技術、スポーツなど5学科、生徒数は190人あまり。驚くのは県立でありながら全寮制であること。監督は人気テレビドラマ「下剋上球児」のモデルにもなった東拓司教諭(48)である。県内外から生徒を集め、地元住民も支援し、ついに春の三重大会を制し、甲子園が見えてきたのである。
紹介した2校の共通点は、町の人口流失、高齢化に歯止めがかからず、このままだと廃校の危機が訪れる。地元の学校の野球部を利用して若者を呼び込み、町を活性化しようという試みである。都会への人口集中、地方山村、漁村の空洞化という日本の現状が背景にあるのである。甲子園49代表校はほとんどが全国区で選手をスカウトした有名私学が占めるだろう。しかし高校野球からも日本社会の姿を見て欲しいと思い、徳島の海部高、三重の昴学園を紹介した。
2026年夏の県大会の結果をお伝えしよう。残念ながら両校ともに初戦で敗退してしまった。(了)
