「記録の交差点」(38)-(山田 收=報知)
第38回 田中将大④
2013年8月16日、西武-楽天戦(西武ドーム)。先発した楽天・田中将大は、8回を被安打5、10奪三振、1失点で勝利投手となり、17連勝。前年8月26日から積み重ねた連勝を「21」に伸ばした。
従来のNPB記録は、1951~52年の松田清(巨人)、1957年の稲尾和久(西鉄)の持つ20連勝。田中が56年ぶりに連続シーズンの連勝記録を更新した。
このあたりからマー君の記録は、日米レジェンドたちの足跡を浮かび上がらせていく。当クラブ会員の蛭間豊章さんから教えていただいた。メジャーの連勝記録は、カール・ハッベル(ジャイアンツ)の24連勝で、1936年7月17日から37年5月27日にかけて達成された。また、開幕連勝記録は、ルーブ・マカード(ジャイアンツ)の19連勝。1912年4月11日から7月3日にわたり樹立された。ちなみに、両者とも野球殿堂入りを果たしている。
マー君はその後、2人の記録も超えていくことになる。
さて、日本のレジェンドでは、1リーグ時代に18連勝を残したヴィクトル・スタルヒンがいる。1940年7月7日の巨人・金鯱戦(新京)での救援勝利がそのスタートだった。この年、プロ野球は7月末から8月末まで、満州で公式戦(巨人は16試合)を行っている。スタルヒンはこの満州シリーズで6連勝(通算25勝11敗)して帰国。秋には、須田博と改名。9月16日の金鯱戦(後楽園)から11月17日の阪神戦(後楽園)まで、白星を重ねた。
前年の1939年にシーズン42勝という驚異的な数字を残した(後に稲尾に並ばれる)スタルヒン。投げるだけではなく、打撃でも超人ぶりを見せた。満州シリーズ中、8月13日のセネタース戦(大連)に先発。5回の満塁一掃の二塁打を含め、3~6回に4イニング連続安打した上に、8回にも2点二塁打。5打数5安打6打点と凄まじい。投手の1試合5安打は1939年の川上哲治(巨人)と1946年の白木義一郎(東急)しかいない。
須田の18連勝中の成績を見てみると、22試合に登板、完投15(完封8)、投球回180回1/3、自責点12、防御率はなんと0.60。今は亡き青田昇さんが報知新聞の評論家時代、「スタちゃん」「スタちゃん」と思い出話をされていたが、数字を改めて眺めるととんでもないスターじゃん、なんて言ってみたくもなる。閑話休題。
2リーグ時代では松田清。残念ながら活字の上での知識しかない。19連勝をマークした1951年、23勝3敗の好成績。2年目で新人王を獲得している。当時ドロップといわれていた縦の大きなカーブを武器にしていたという。制球に難のある左腕だったようで、56年に国鉄に移籍、その年限りで引退、実働7年の現役生活だった。
ひと際輝いたのがその51年だった。5月23日の広島戦(後楽園)で白星街道をスタートさせ、5月2勝、6月3勝、7月4勝、8月4勝、9月5勝と白星を重ね、18連勝。10月4日、シーズン最終戦となる名古屋戦(鳴海)で完投勝利を飾り、19連勝でスタルヒン超え。翌52年、3月22日の国鉄戦(後楽園)に9回、リリーフ登板も失敗。5-5の同点とされるが、その裏、与那嶺要のタイムリーでサヨナラ勝ち。幸運も加勢して前年から20連勝の大台に乗せた。
次回は「神の子、不思議な子」マー君に抜かれたもう一人、「神様・仏様」稲尾和久に焦点を当てる。=記録は2026年7月30日現在=(続)
