「大リーグ見聞録」(102)-(荻野 通久=日刊ゲンダイ)
◎大エース時代の終焉
▽「先発投手の模範」
今年のMLBオールスター(現地2026年7月14日、フィラデルフィア・フィリーズ本拠地シチズンズバンク・パーク)でひとりのベテラン投手が話題になった。
7月8日に今季限りで現役引退を表明した、タイガースのジャスティン・バーランダー(現役21年で266勝159敗、防御率3・33)だ。43歳でMLBの最年長投手。今季、初戦のダイヤモンドバックス戦に先発し3回3分の2で5失点。その後、腰やふくらはぎを痛め、戦列から離れていたが、「レジェンド枠」で球宴メンバーに名を連ねた。
「今年は肉体的、精神的に初めて経験するシーズンだった。ここ数か月、いよいよ辞める時がきたと認識した」
と語るバーランダーの引退は、ひとつの時代の終焉を告げる、とアメリカでは語られている。大エース時代の終わりである。
昨季、ドジャースのクレイトン・カーショー(37歳、18年で221勝96敗、2・53)が引退。6月半ばからDL入り。7月27日に復帰登板した、ブルージェイズのマックス・シャーザー(42歳、18年で221勝117敗、3・22)もシーズン後にユニホームを脱ぐことが確実視されている。復帰登板は3回3分の2で1失点も、4安打3四球。今季は0勝4敗、防御率9・49だ。
米ESPNはこの3人を「old―school aces」と称している。「ひと昔前のエース」という意味だが、その理由は3人の投球回数の多さだ。
▽「分業制とQS」
2009年から2025年まで、シーズンで2017イニング以上投げた投手は延べ20人。そのうちバーランダーが7回、カーショー、シャーザーが各4回。200回まで広げれば、12、5、6度だ。それぞれ現役時代、3567、2855、2967イニングを投げている。
次に完投数。バーランダー26、カーショー25、シャーザー12。3人はそれぞれ3度、サイ・ヤング賞を受賞。投球回数だけでなく、中身もともなっている。ESPNが「先発投手の模範」という所以だ。
ちなみに二刀流の大谷は7年目で1度。サイ・ヤング賞を2度受賞の現役を代表する、J・デグローム(12年、レンジャース)、B・スネル(9年、ドジャース)も完投は各1度だけだ。
今、MLBでは先発は「6回3失点ならクオリファイ・スタート(QS)」として評価される。完投するより試合を作ることが求められる。先発投手の健康、体調を尊重するとともに、分業制によって、多くの投手に仕事、役割を与えている。そんな時代の傾向に逆らって、3人は投げまくってきた。3人の“引退”でMLBでは「先発完投」はいよいよ死語になろう。
さらにMLBでは「300勝投手は今後もう出てこない」ともっぱらだ。過去24人で、最後の300勝投手は2009年7月4日達成のランディ・ジョンソン(当時ジャイアンツ)である。(了)
