「大リーグ見聞録」(103)-(荻野 通久=日刊ゲンダイ)

◎J・アルバレス 14年ぶりの三冠王誕生か
▽パワー、勝負強さに四球増
 今年はMLBで2012年のミゲル・カブレラ(タイガース)以来、14年ぶりに三冠王が誕生しそうだ。アストロズのヨルダン・アルバレス(29)が打率.319、本塁打36、打点91で3部門のトップあるいはトップタイに立っている(現地8月27日現在)。
2021年から4年連続で30本塁打以上。元々、飛距離には定評があったが、今季はさらにアワーアップ。相手バッテリーに警戒されて四球(リーグ最多の91)が増え、それが高打率キープにつながっている。8月23日のアスレチックス戦では3つの申告敬遠。これはチームタイ記録だ。
四球の多さには以前、MLBのHPでこう話している。
「四球は自分にとっても、走者が塁に出ることでチームにとってもいい。(打撃で貢献できないので)ちょっとストレスは感じるけど」
得点圏での打率は4割台。チャンスにめっぽう強く、満塁ホームランも3本放っている。6月22日のマリナーズ戦ではサイクルヒットを記録した。昨年、やはりサイクル安打を達成したチームメイトのJ・アルチューベはその時、こう絶賛した。
「彼こそサイクルヒットにパーフェクトな選手だ。パワーがあり、打てるし、走れる」
▽密航船でキューバから亡命
アルバレスはキューバ出身。キューバのリーグ戦で活躍し18歳のとき、亡命請負業者の船でハイチを経由して米国に亡命。家族をキューバに残しての密航だった。2016年に200万ドル(当時のレートでは約2億6000万円)でドジャースが獲得。その後、アストロズに移籍。2019年6月にメジャーデビューすると、87試合の出場ながら27本塁打、78打点で新人王に輝いた。
 2022年のシーズン途中に、6年1500万ドル(約150億円)の長期契約。196㌢101㌔のいかつい風貌の巨漢だが、その外見に似合わず、心やさしきナイスガイと報じられている。チームメイトはアルバレスを熊の縫いぐるみの「テディベアみたい」と言う。
 今季は最大のライバル、A・ジャッジ(ヤンキース、昨年首位打者)が5月に怪我で戦線離脱。C・ローリー(マリナーズ、本塁打、打点の二冠)も打率.167、18本、52打点だ。
専門家30人による最新のア・リーグMVP投票でも、アルバレスはJ・カミネロ(レイズ)を抑えてトップ。三冠王とMVP同時受賞も視野に入る。
 プレッシャーからか、試合に集中するためか、最近、アルバレスは三冠王に関しては口を閉ざしている。三冠達成なら、20世紀以降では13人目(2人が2度達成で計15回目)の快挙となる。(了)

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