第5回 まぶしい草野球(島田健=日本経済)
◎野球をする彼を思う乙女心
▽ユーミンの数少ない野球の唄
松任谷由実(1954年=昭和29年生まれ)は言わずと知れたシンガーソングライターだが、「野球はよく知らない」という通り、野球に関する唄は2曲ぐらい。
80年12月にリリースしたアルバム、「サーフ&スノー」に収録したこの曲はやはり、76年に結婚した松任谷正隆がアマ野球好きというのが影響したのだろうか。ちなみにもう一曲は97年発表の「コールドゲーム」で、こちらは野球に例えた恋の唄である。
▽球場の臨場感たっぷり
まずグラウンドのざわめきが聞こえてくる。審判のコールらしき物が入り、応援やの声、打った後のどよめきが続き、「風の外野席 てのひらかざして 青い背番号たしかめてみる」とスタートする。草野球の雰囲気が十分伝わってくる。
野球に夢中な彼の応援に弁当持参で駆けつけた彼女というシチュエーションで、「寝坊できる休みの日でも なぜあわててとんでゆくの」と競技に対するジェラシーも感じさせるものの、最後は「あなたがまぶしい草野球」で終わる。
草野球賛歌でもあり、彼氏賛歌でもある。
▽CMでも人気
80年には不二家のソフトエクレアのコマーシャルソングとなった。この唄を気に入ったものの、曲名がわからず、後に調べて分かったという女性が結構多い。
ただ、使われている部分は「まだ季節浅く、逆もどりのてんきもあるわ やっと気づいてくれた その心の行方のように」という一節。2007年にはハウスプレミアカレーにもリミックス音源が使われた。
▽乞う!野球の決定版
スキーなどユーミンのスポーツに関する曲は結構ある。
84年発表の「ノーサイド」は同年の大分舞鶴ー天理の高校ラグビー決勝を題材としたもの。13年12月の旧国立競技場最後の早明戦で、グラウンドで演奏されて感動を呼んだ。
「野球に詳しくない」とはいえ、同世代のユーミンファンとしては、野球に関して女性目線の唄もいいけれど、男女とも感動できる一曲を作ってくれることを期待している。(了)