多くのファンに喜ばれる球界を目指して
東京プロ野球記者OBクラブの懇親会に出席した王貞治氏は、プロ野球人生60年を振り返り、その歴史と現在の野球界について語った。
▽個人の対決からチームの戦い
「もう、プロで60年も経ったのか、という思いです。記者の皆さんとともに過ごしてきたことがとても懐かしい。皆さんとのことは、鮮明に覚えている」
「現在の野球は、僕が若かった頃とは随分変化している。僕たちの頃は、例えば、村山実対長嶋茂雄の戦いとか、僕なら江夏豊との対決とか、ファンから注目された。個人対個人の戦いが、野球の面白さを盛りあげた」
「最近の野球はそうじゃなく、チームとチームの戦いに代表されるようになった。工藤ホークスとか原ジャイアンツとか、チームの戦いとして言われている」
「ピッチャーの方でも変わってきた。いろんな専門のピッチャーが出てきた(先発、中継ぎ=セットアッパー、ワンポイント、抑え=クローザー)。しっかりした先発投手は、数えるほどしかいない」
▽将来に向け少年野球の拡大を
「野球はもっともっと発展しなければならないが、オリンピックでは2020年の東京五輪では正式種目にならなかったものの、追加種目と実施されることになった。しかし、2024年のパリオリンピックでは外れてしまった。とても残念なことです」
「野球は、少年野球を行なう底辺を拡大し、野球人口をさらに増やしていくことがいま求められている。われわれはみんなが前向きに取り組み、多くのファンに喜ばれるような野球界にしなくてはならない。それだけに、本日は、野球記者である皆さんとお会いし、皆さんに尻を叩かれながら、野球の発展のために頑張らなくてはならないと感じた次第です」
▽世界の子供たちに野球の普及活動
王氏は、世界少年野球推進財団の理事長も務め、少年野球の育成と野球発展に尽力。毎年夏休みに世界各国の少年少女を招き、野球を通じて団体生活などを体験させている。
「世界各国の少年、少女が世界大会を通じて交流を深めたのは、とても有意義なこと。野球のルールを覚え、プレーが上達し、友情が生まれてくる。10日間の共同生活をして、日本の地方の文化、歴史を知り、新しい発見をした。プールで泳ぎ、枕投げもして、自己主張をするようになる。とてもいい催しだった」
懇親会ではその活動をビデオで紹介した。(露久保孝一=産経)