「セ・リーグDH採用で球界が変わる?」-(山田 收=報知)
第21回 2021年のDHを総括する(2)
前回、日本シリーズでのDHについて述べた。昨年末、古巣の報知新聞社記録担当にお願いして、21年の両リーグDHのデータを揃えた。そこで分かったのは、第14回で触れた交流戦の数字に誤りが散見されたこと。言い訳になるが、新聞掲載のテーブルを手集計したもので、残念ながら正確性に欠けた。今回はBISの数字なので、間違いない。訂正も兼ねて、今回は21年セ・リーグのDH模様を眺めてみることにした。
交流戦でDHを起用した9試合での打率を球団別に順位を並べると①阪神.371①中日.371③DeNA .353④ヤクルト.281④巨人.281⑥広島.156となった。セ6球団トータルでは.305でそれなりの成績を収めた。過去5シーズン(20年は交流戦中止)を振り返ると、19年.228、18年.255、17年.216、16年.242。21年のセ・リーグDH要員の奮闘が目立つ。
では、この5シーズンの通算打率、本塁打をチーム別に見てみると①DeNA打率.293 8本塁打②中日.275 10本③巨人.254 4本④阪神.243 5本⑤ヤクルト.223 1本⑥広島.207 4本、となる。DeNAが安定して人材を輩出している感じである。21年の場合だと、オースティンが11打数6安打5打点、2本塁打。打率.545、長打率1.273、出塁率.688と破壊力満点だ。オースティンは交流戦18試合全体でも打率.386(12球団4位)、7本塁打(1位タイ)、47塁打(1位タイ)と、チームを交流戦3位、打率トップ(.297)に押し上げる原動力になった。
過去4シーズンでも筒香が主に務めており、DHにふさわしい人材に恵まれ、うまく起用できる伝統があると思える。
他球団をみてみると、21年の場合、中日では44歳の福留が本塁打0ながら、14打数6安打2打点、打率.429、長打率.571、出塁率.500、OPS(長打率+出塁率)1.071。普段は代打の切り札的存在である大ベテランが、確固とした居場所を見つけたようだった。また、21年交流戦打率トップ(.409)のビシエドが過去4シーズンで22打数9安打9打点、3本塁打、打率.409をマークしており、DHをセが導入しても、すんなり適応できるのではないか、と勝手に想像する。
一方、リーグ優勝を果たしたヤクルト。日本シリーズでもDHを務めたサンタナが、24打数8安打1打点、打率.333、本塁打0、長打率.417、出塁率.429だった。ヤクルトには60本塁打の日本記録保持者バレンタインが在籍していたが、ここ5シーズンでは2019年の1本塁打のみ。しかも、それはルーキーの中山が記録したものだった。
ヤクルトの戦いぶりは、交流戦でも日本シリーズでもDHに依存する形にはなっていないし、本塁打も少ない中で、らしい戦いを展開したといえる。おそらくDHが採用されても、このチームの戦いぶりは変わらないだろう。次回はパ・リーグ編。(続)