第75回「二死満塁の青春」(島田 健=日本経済)
◎唄のうまさ昔から
▽新御三家
1970年代の男性アイドル新御三家といえば、郷ひろみ、西城秀樹、野口五郎である。西城秀樹は病に倒れたが、残り二人は健在。オールドファンにとっては頼もしい限りである。さて、唄のうまさとギターテクニックに優れる野口が人気絶頂の1977(昭和52)年に出したアルバムはニューヨークで録音された。「GORO IN NEW YORK」。当時まだ21歳で生意気だと思われる方もいるかもしれないが、バックがまたすごかった。フュージョンやジャズで活躍中のデビッド・サンボーン、ブレッカー兄弟、ジョン・ファディスなど精鋭を集めたその名もニューヨーク・スーパー・セッション。ただ唄も負けていない所はさすがだった。
▽サンボーン07
ニューヨークに行って一番会いたかったのはアルトサックスのサンボーンだったようだ。当時(今も)泣けるサックスとして有名、グラミー賞もいくつかとっていたサンボーンとは意気投合したようで3年後に彼が来日したときは旧交を大いに温めたそうだ。ジャズ好きの筆者にとっては夢のような出会いである。
▽ヒットコンビ
ほとんどが作詞松本隆、作曲、編曲筒美京平というヒットメーカー同士の共作。この曲もそうで「白い打球が空を翔ける 二人の愛が星空を渡った夏の夜」と始まる。どうやら球場で「お一人ですか お嬢さん」と声をかけたのがきっかけといういささか古めかしいラブストーリーだが、「僕と一緒に生きるたび 苦労ばかりをかけたね」と行く道は平坦ではなかったらしい。
▽二死満塁
曲が終わりそうになった時、ようやく「二死満塁」が出てくる。「Two out bases loaded」をリフレインした後、「二死満塁のピッチャーは 振り返れない運命をてのひらに握っている」。同じ二死満塁のシチュエーションでも、この唄は守るピッチャーに焦点を当てていたのだ。青春とはいつも危ういし、決断を迫られているというのだろう。この最後の部分でこの唄の評価がグッと上がる。バックのプレイを含めて最後まで聞いてほしい。
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