「大リーグ ヨコから目線」(34)-(荻野 通久=日刊ゲンダイ)

◎世界一ドジャースは単なる金満球団ではない
▽生え抜きがチームの主力
今年のワールドシリーズはドジャースがレイズを4勝2敗で破り、1988年以来、32年ぶりに世界一となった。ここ8年間、毎年、ポストシーズンに進出。2017、18年はワールドシリーズに進出もレッドソックス、アストロズに頂点を阻まれていた。球団にとっても、ドジャーズファンには「待ちに待った世界一」だ
 ドジャースというと金満球団が形容詞。実際、今季の年俸2億2000万ドル(約232億円)はヤンキース(2億40000万ドル、約257億円)に次いで2位。今季もムーキー・ベッツ(12年契約、約360億円)とデビット・プライスを3年契約、約96億円で獲得した。
ただ、中心選手は生え抜きだ。5人の先発ローテーション投手のC・カーショー、W・ビューラー、J・ウリーアス、D・メイ、T・ゴンソリンは生え抜き。中継ぎ、抑えのK・ジャンセン、P・バエズや今季、レッズから戻ったA・ウッズも同様だ。移籍したプライズはコロナ禍で今季の出場を辞退。それでも投手陣はビクともしなかった。
野手でもMVPになったC・シーガーをはじめ、W・スミス、C・ベリンジャー、J・ピーダーソンらがドジャース育ちだ。
 もともとドジャースは育成、スカウト部門に定評がある。1981年の世界一のチームも、B・ウエルチ、S・ハウ、S・イエーガー、S・ガービー、R・セイ、B・ラッセルら生え抜きが主力だった。それが88年にもつながっている。
▽30年以上前に「今日」を予見
 当時の資料によると、ドジャースにはフルタイムのスカウトが24人、シーズン中だけ働くパートタイムスカウトが25人いて、それぞれが5人から10人の外部協力者を持っている。そうしたスカウトが全国を車で走り、さらに各地域の協力者から情報を収集、将来性のある新人をスカウト。あるいは他球団で埋もれた人材を発掘、獲得して主力選手に育てている。
今年3、4番を打ったJ・ターナー、M・マンシーはその典型例だ。ターナーは13年までメッツで伸び悩んでいたが、14年に移籍すると昨年まで打率3割を3度、2桁本塁度を5度記録。マンシーも16年まではアスレチックスの控えだったが、18、19年は30本以上の本塁打を打っている。その精神は今に至るまで脈々と受け継がれている。
 コンバートも盛んだ。抑えのジャンセンは元捕手、ゴリンソン、バエズは元内野手だ。
選手の適正と能力を見極めるコーチ陣も充実している。
 30年以上前、ドジャースは将来の球団拡張(当時は26球団、現在は30球団)に備えて「指導者の育成とスカウト網も整備」を打ち出した。それがここにきていよいよ結実している。
同じ金満球団のヤンキースは09年に世界一になってから、ワールドシリーズに進出していない。13、14、16年にはポストシーズン進出も逃した。いかにドジャースのカネの使い方が効果的かわかる。
 ドジャースは今、約100億円をかけて球場を改装している。来年は新装なったドジャースタジアムで連覇に挑み、再来年はオールスターを迎える。ドジャース時代の幕開けになるのではないか。(了)