「いつか来た記者道」(73)-(露久保 孝一=産経)

◎オリ姫が出会う年1度の恋するV
 7月7日といえば、まず七夕を思い浮かべる。この日は、織姫と彦星が1年に1度だけ天の川で会える日である。プロ野球にも、実は「おりひめ」がいる。こちらは「オリ姫」で、1年に1度だけではなく、いつでも会うことができる。彼女たちは、オリックスを愛する女性ファンの総称である。
 プロ野球の関西地区は、伝統的に阪神が圧倒的な人気を占めており、パ・リーグの存在感は薄かった。そこで、オリックスは阪神とは違う新しいファン獲得に目を向け、女性をターゲットにした。広島が女性ファンを「カープ女子」と呼んで話題になったことに刺激を受け、2014年にオリックスのオリから織姫をイメージして「オリ姫」と名づけた。
 15年から「Bsオリ姫デー」と銘打ってファンと一体となった企画を開催し注目され、さらに19年からテーマに沿って推し進めたい選手を選ぶ「オリメン投票」を始めた。これらのイベントの情報は女性の中で話題になり、本拠地京セラドームへの女性入場者を増やし、交流サイト(SNS)を通じて語り合う女性の輪が広まった。
▽女性層が増えプロ球界最多の入場者を記録する?
 オリ姫たちの後押しは強く(?)、オリックスを21年から3連覇に導き、23年は主催試合で球団史上最多となる約195万人の観客動員を記録した。
24年に入り、プロ野球はパンデミックを乗り越えて熱戦を展開し、球場の観客動員は増えている。交流戦が終わった6月半ば時点で、セ・パ全試合における1試合当たり平均動員は3万人を突破した。23年は同2万9219人、22年は同2万4558人だから、24年の成長ぶりが目立つ。シーズン後には、NPB全体で史上最多の試合入場者数を記録するかもしれない。
 毎年行われる七夕は、日本の夏の風物詩である。浴衣を着て、七夕飾りの笹竹と五色の短冊をながめ、冷たいそうめんのさっぱりした味を楽しむ。街では、宮城県の「仙台七夕まつり」や「湘南ひらつか七夕まつり」のような大がかりな飾りが見物人を魅了する。
 野球も七夕に負けないような伝統と華やかさがあり、それに加えてオリ姫やカープ女子たちの12球団を網羅する黄色い声援がチームに活力を与える。「年一度だけ会える」秋のリーグ優勝の喜びに向け、応援を続ける乙女たちの姿は野球へのストライクであり魔球である。(続)