第78回「スイング」(島田 健=日本経済)

◎ガールハント
▽打者へのヤジ
「ボールゲームへ連れて行って」と野球の唄定番の「テイク・ミー・トゥ・ザ・ボールゲーム」の出だしでスタートすると、いきなり速射砲の様に「スイング バッタ バッタ」「スイング バッタ バッタ」「スイング バッタ バッタ スイング」と畳み掛ける。米国で「ヘイ バッタ バッタ スイング」といえば、試合で相手打者に対するヤジである。「ほらバッチどこ見てんだよ ど真ん中だろ 打つ気あるのか ヘイ バッチ バッチ」と日本でもお馴染み。打者の集中力を削ぐ作戦である。
▽打撃練習中
だが、この唄ではシチュエーションが違う。春のバッティング練習中の一コマなのだ。球場でシート打撃を展開中に、一人の美女がやってきた。当然、打者(おそらくマイナーリーグ)のモチベーションは上がる。いいとこを見せて何とか練習後にデートしたい気満々である。そう、このヤジは味方の打者相手なのだ。
▽勝者は誰か
一人目は「ここにはよく来るの」「今のは何のサイン」「待ってよどこへ行くの」と声かけが全て空振りで見事にアウト(ジミー)。二人目は「ハーバードに行ったんだよね」と嘘をつき、一塁には行ったが、でも難しすぎて一学期しか持たなかったという結末でアウト(トム)。三人目が「家まで送ってやろうか」というと彼女は「みんなまた今度ね」とつれない素ぶり。だが、放った打球は一直線にスタンドイン。その後はご想像の通りである。
▽カウボーイ
2006(平成18)年、発表のこの唄。トレース・アドキンス(62年生まれ)が世に出したが、いかにもカントリーらしい曲調、曲想でビルボードのホット・カントリー・ソングで20位まで上がった。いかつい体にカウボーイハットをいつも身につけているアドキンスは俳優としてもマイクル・コナリー原作の映画、リンカーン弁護士などに出演している。唄の最後は「Holy cow」。いかにもカウボーイらしい風貌に敬意を表したのかと思ったら、意味は「何てこった」だった。
検索は「Trace Adkins Swing」(了)