「セ・リーグDH採用で球界が変わる?」-(山田 收=報知)

第13回 もしセがDH制を採用したら①
前回まで、DH制へのセ・リーグの反対論を見てきた。とはいえ、現実にはセの球団もDHで戦う公式戦がある。それがセパ交流戦であり、日本シリーズだ。
2年ぶりとなった2021年の交流戦は、5月25日から始まった。DH制を巡る論議のある中、ファンにとっては、興味深い3週間になるだろう。全6カードのうち、第2、第5、第6カードがパ本拠地で行われ、DHが採用される。
 交流戦といえば、ソフトバンクが15シーズン中8度の優勝を達成するなど、パがセを圧倒している。通算でもパの1102勝966敗60分け、セが勝ち越したのは、2009年だけだ。セ球団の最高勝率は、巨人が2度、ヤクルトが1度。球団別通算勝率でも、1~6位のAクラス入りをしているのは、セでは4位の巨人のみ。
 直近の19年を振り返ってみても、3位・巨人、4位・DeNAがAクラスで、
阪神、ヤクルト、広島が10~12位を占めている。ソフトバンクが強いというのは事実だが、球界全体でもパ高セ低を認めざるを得ない。
 パ優勢の中で19年、健闘したのは巨人。最終的には11勝7敗で3位。最終戦のソフトバンク戦(東京ドーム)に勝てば、5年ぶり3度目の優勝だった。セが弱いのはDH制が原因ではないが、巨人を例にDHをどう活用したかを振り返ってみたい。
 巨人は、代打の切り札だった阿部を主戦に、やはり打力が魅力の大城という左打ちの捕手勢をDHに据えた。この年が現役最終年となる阿部は、まさにDH適任という感じ。巨人がパ本拠地で戦ったのは、楽天、西武、日本ハムで、いずれも2勝1敗で勝ち越した。
 巨人のDHの成績は9試合で、打率.281、4打点1本塁打。相手のDHはというと、楽天、日本ハムが打率.182、打点0、西武が打率.083、2打点。2年前に関しては、DHは巨人の方が機能していたといえる。というより、巨人の投手力が相手打線を上回っていたということだ。
 交流戦という短期戦では、DHの戦力差はさほどないが、長期戦のペナントレースとなると様相は違ってくるだろう。
パでも、1人の打者専任ということはまずない。相手投手によって、複数の選手を使い、疲労度を考え、守備を外すこともある。DH採用反対論者のなかで「選手起用の幅が広がるかは疑問」というセ監督経験者の声を紹介したが、指名打者という“ポジション”を巡って、起用の多様性は十分にあるのではないか、と考える。
 パは、DH制45年以上の歴史の中で、個性的な選手を発掘し、チームを強化。リーグ全体のレベルアップ、各球団の発信力も相まって、ファンを増加させてきた。DH制が生んだ攻撃力アピールの野球が多くの副産物を生んできた。(続)