第58回 ニューヨーク・ニューヨーク(島田 健=日本経済)

◎非公式市歌
▽シナトラがカバー
1977(昭和52)年公開のアメリカ映画、ニューヨーク・ニューヨークの主題歌。マーティン・スコセッシ監督で、第2次世界大戦終了直後のニューヨークを舞台にしたサックス奏者と女性歌手のラブストーリーを、ロバート・デニーロとライザ・ミネリが演じた。同年代、まずレコード化したのはミネリでその後の持ち歌にもなったが、全国的に認知されたのは、ミネリの友人でもあったフランク・シナトラが79年にカバーしてヒットしてからだろう。
▽ユダヤ教徒の成人式
題名からして、ニューヨーク市民に愛されるのは当然だろう。ミュージカルのシカゴを手がけたジョン・カンダーとフレッド・エッブが作曲と作詞を担当した。オリジナルの楽曲に主演のデニーロが「(アピール度が)弱すぎる」とクレームをつけて書き直しを要求したのも有名な話である。ともかく、市の公式行事や、身内のパーティーなどに欠かせない曲となり、ウイキペディアには結婚式と共にユダヤ教徒の男子の成人式がその例として挙げられている。金融界を牛耳るユダヤ系が目立つ土地柄がうかがえる。非公式市歌と称されている。
▽ヤンキーススタジアム
スポーツでもアメフト、バスケット、アイスホッケーと何でも演奏されるが、やはり、ヤンキースタジアムが一番有名である。80年7月から試合終了後に大きなスピーカーから流されるようになったそうだ。シェイスタジアムのメッツの試合ではファンが「あれはヤンキースの歌」と言ってブーイングしたため流さなかった時期もある。当初は勝った日はシナトラバージョン、負けた日はミネリバージョンと決まっていたが、ミネリが「私の唄を勝った日にも使うか、全く使わないかどちらかにして」と言い出して、シナトラの唄声が勝っても負けても流れることになった。
▽アメリカンドリーム
歌詞の内容は、さあニューヨークに出て成功してやるぞ、といった意気込みを感じさせる。「俺が今日 旅立つことを みんなに広めてくれ 俺はあの一部になりたいんだ ニューヨークに」で始まるが、前奏の後にシナトラのこの英語の唄いだしを聞くと、この街に来たんだと実感させられたものだ。終わりの方では「眠らない街で目覚めたい そしてナンバーワンに リストのトップに 丘の王者に」とはれやかに希望を表現する。アメリカンドリームに繋がるやる気を起こさせる曲である。
検索は「 Theme from New York, New York」(了)