第11回 ベースボールブギ(島田健=日本経済)

◎1980年の思い出が横溢

▽最強の助っ人兄弟

日本プロ野球で兄弟で同じチームで活躍した外国人選手といえばリー兄弟だ。1977年(昭和52年)に兄レロンがロッテ入り、いきなり本塁打王と打点王を獲得すると、翌年には弟のレオンを呼び、2人で中軸を打つようになった。80年には左打ちのレロンが打率3割5分8厘で首位打者、33本塁打、90打点と打てば、右打者レロンも打率3割4分、41本塁打、116打点。まさに最強の助っ人コンビになった。

▽選手の余技としては好評

そんな年に出したのがこの唄。打球音に続いて「打ちました これは大きい ライトへ伸びた ずっと伸びた 弟レオンの同点本塁打に続きましてリーのサヨナラホームランが出ました 三塁ベースを回りましたリーがホームイン リー兄弟は今ステージに向かいます」という前触れは実況アナウンサーの日本語だが、「カモンベースボールブギ みんな俺たちの唄を聞いてくれ ベースボールブギを始めたら 夜も昼も止まっちゃダメだ」などと続く唄は全編ノリのいい英語。「スーパースターになるんだ」という決めゼリフもあって、唄としても好評だった。

▽ブルースブラザーズそっくり

今は懐かしいドーナツ盤(EP)のジャケットには黒服、サングラス、黒タイ、黒帽子の2人が並ぶ。まさにジョン・べルーシとダン・エイクロイドのブルースブラザーズ(BB)のパクリである。80年は映画ブルースブラザーズが公開された年。その当時でもちょっと懐かしいリズムアンドブルース(R&B)という曲調もよく似ていて、一瞬、BBのテーマ曲ともいえる「お前を離したくない」(オーティス・レディング作)のリズムも聞かれる。同映画はあまりに面白くて筆者はサントラ盤(LP)を買ってしまった。

▽ヒゲダンスにも通じる

当時のお化け番組、ドリフターズの「8時だョ!全員集合」で披露された加藤茶と志村けんのヒゲダンスにもリズムが似ていると思ったら、ヒゲダンス自体がR&B系の唄のベース部分をヒントにしているうえに、リーブラザースのバックバンドは「ヒゲ」のテーマをリリースした、たかしまあきひこ&エレクトリック・シェーバーズだった。80年の思い出が次々に現れて来そうな曲である。今振り返っても親しみのある年ではあるが、レオンが大洋時代、横浜球場で遊んでいた息子、デレク・リー(05年、ナ・リーグ首位打者)がとっくに引退したと聞いて我が身の歳を思い出した。(了)