第8回 新元号にふさわしいヒーローと激戦必至の潮流-(露久保孝一=産経)
▽平成元年、セは巨人が逃げ切ってV、パは大混戦だった
2019年.平成の時代が終わり、新元号の年になる。新しい日本にふさわしいプロ野球には、どんな新風が吹くのだろうか。
31年前、日本は平成元年がスタートした。その1989年の年、プロ野球はすさまじい戦いをした。
セ・リーグは巨人が広島の追撃を振り切って逃げ切り、パは3チームが2カ月にわたって激しい首位争いを続け、近鉄が「鼻の差」でオリックスと西武に競り勝った。
日本シリーズは巨人が近鉄との接戦を制して日本一に輝いた。
一言でいえば、平成幕開けはファン興奮の「燃える野球」であった。藤田元司監督の巨人でさえ、夏場の貯金があったからこその苦闘のリーグ制覇だったのである。
わが国は、2019年4月30日に天皇陛下が譲位され、5月1日に皇太子が即位されて新しい日本の天皇になられる。 そのあとに、新しい元号が決まる。新しい潮流に敏感に反応するのは、いつの時代でも若い力である。
▽かつての偉大なる三本柱、10試合連続完投勝利もあった
平成元年の巨人には、若き血潮に燃える「偉大なる三本柱」が存在した。24歳の斎藤雅樹、26歳の槙原寛己、21歳の桑田真澄である。その年、斎藤は20勝7敗、槙原12勝4敗4S、桑田は17勝9敗をマークした。
3投手で49勝、巨人の年間勝ち星の約6割を3人で稼いでいる。斎藤は7月8日の大洋戦で10連続完投勝利をあげた。先発、中継ぎ、リリーフの「分業」時代に入った現在の野球からいえば、信じられない「剛腕」ぶりである。
しかし、決して酷使ではない。「チーム貢献」への栄誉ある力投につぐ力投だったのだ。それが、かつての野球人の生き甲斐であったのである。
新元号となる来年のプロ野球は、平成元年の巨人日本一の「いつか来た道」の再現となるかどうか。巨人ファンからは、新しい時代の優勝に最もぴったりするのは「球界の盟主」であり人気ナンバー・ワンの巨人をおいてほかにない、という声も出ている。
▽平成元年生まれの菅野こそ新元年の舞台にふさわしい
その可能性は? 戦力的には十分にある。
投手陣に、偉大なる三本柱と似たムードが潜んでいる。中心となる投手は、18年15勝8敗で沢村賞を2年連続受賞した菅野智之だ。菅野に続くのは岩隈久志、山口俊、野上亮磨。岩隈は楽天で2008年21勝4敗、山口は2018年巨人でノーヒットノーランを含む9勝9敗1S、野上は2017年西武で11勝10敗の成績を残している。
岩隈ら3投手は巨人生え抜きではなく、菅野を含め30代の投手たちばかりではあるが、2ケタをあげる実力派たちだ。新三本柱が生まれるかも・・・。
その中で注目の的は、菅野である。彼の誕生日は1989年10月11日、なんと平成元年生まれの男なのだ。元年生まれの男が、次の元年に大芝居を演じるという舞台措置がそろった。
監督に就任した原辰則は、菅野の母方の伯父である。心身ともに燃え上がる材料は整い、秋の感激のフィナーレをめざして演じきる? セの他5球団の「打倒菅野」作戦も見ものである。
パ・リーグは、個人よりもチーム全体で混戦、激闘のペナントを展開するか。西のソフトバンク、東の西武、北の日本ハムなど、平成元年のような最終戦ぎりぎりに優勝が決まるような熱きレースが見られれば、セとは違った盛り上がりが見られることは必至。
2019年、「いつか来た記者道」に大いに価値ある面白い材料を提供してくれそうな予感がぷんぷんなのである。(続)