第15回 世界最強チームの本領発揮(菅谷 齊=共同通信)

▽開幕戦に4本塁打、全米のパワー炸裂

第2回日米野球は1934年11月5日、神宮球場で開幕した。全日本の先発投手は伊達正男。早稲田大のエースとして知られた大型右腕である。
 伊達は1回、ルースまで3人を討ち取った。上々のスタートだった。しかし、その剛腕が2回につかまった。先頭のゲーリッグに四球を出した後、フォックスに本塁打され、続くエビレルにもスタンドに運ばれた。
 あっという間の3失点だった。
 3回にはゲーリッグの一発と、パワーで圧倒された。エビレルは2本目のホームランを放ち、全米は4ホームランで5得点。
全日本は1点に抑えられた。
満員のファンは、勝敗よりも、大リーガーの力のすごさに驚き、満足した。と同時に、野球の面白さを、豪快さを実感したのだった。

,h4>▽21得点、23得点…全米17戦全勝

11月5日から12月1日までの17試合の成績は次の通り。
① 5日 神 宮 全米 5-1全日本
② 7日 函 館 全米 5-2全日本
③ 8日 仙 台 全米 7-0全日本
④ 10日 神 宮 全米10-0全日本
⑤ 11日 神 宮 全米13-2全日本
⑥ 13日 富 山 全米14-0全日本
⑦ 17日 神 宮 全米15-6全日本
⑧ 18日 横 浜 全米21-4全日本
⑨ 20日 静 岡 全米 1-0全日本
⑩ 22日 名古屋 全米 6-5全日本
⑪ 23日 名古屋 全米 6-2全日本
⑫ 24日 甲子園 全米15-3全日本
⑬ 25日 甲子園 全米 5-1全日本
⑭ 26日 小 倉 全米 8-1全日本
⑮ 28日 京 都 全米14-1全日本
⑯ 29日 大 宮 全米23-5全日本
⑰ 1日 宇都宮 全米14-5全日本
 全米は2ケタ得点が半数以上の9試合と、けた外れの打力を見せつけた。わけても第8戦の21点、16戦の23点は、すさまじいとしか言いようがなかった。
 看板の長打力は、計47本塁打。23得点の試合では10本塁打を放った。
 個人では、やはりルースが実力を示した。76打数31安打の打率4割8厘、本塁打13、打点33で、三冠王となった。ゲーリッグは6本塁打、18打点。フォックスは7本塁打、14打点。
 この17戦のなかで若武者沢村が快投を演じ、大リーガーをうならせた試合があった。日本国中にさらなる野球熱を煽った歴史的一戦である。(続)