「大リーグ ヨコから目線」(27)-(荻野通久=日刊ゲンダイ)

◎新型コロナウイルスとチャリティー精神
▽ユニホーム生地からマスク
 新型コロナウイルスに大リーグも翻弄されている。
2020年の公式戦は本来なら3月26日(日本時間27日)開幕するはずが5月9日に延期。各球団のキャンプも打ち切りとなった。5月の開幕もコロナウイルス拡大次第で再延期の可能性が高い。
そんな中、影響を受けている球界関係者や貧困家庭などの支援、救援に素早く動いているのが大リーグ機構や選手たちだ。
 3月半ばに大リーグ機構と選手会が100万㌦(約1億円)をコロナウイルスで影響を受ける子供や高齢者、退役軍人の食料支援でフードバンクのNPO法人に寄付。3月16日にはロブ・マンフレッド・コミッショナーの呼びかけで30球団が100万㌦ずつ拠出して、キャンプ地や本拠地の季節従業員(SEASONAL BALLPARK EMPLOYEES)に支払うことを決めた。
キャンプ中断や開幕延期で本来、得るべき賃金がもらえなくなるからだ。また試合がないために無収入になるマイナー選手への生活費支給も行われる。
 シカゴ・カブスのアンソニー・リゾは自らの基金を通じて、地元の子供病院に20万㌦の食料支援を行った。同じカブスのジェイソン・ヘイワードは20万㌦をコロナウイルスで影響を受ける家庭にNPO法人を通じて寄付している。
ピッツバーグ・パイレーツの選手有志は地元のピザ店から400人分のピザを購入。コロナウイルス治療に当たる病院のスタッフに届けた。ピザを買うことで客が減った店の売り上げにも貢献しようというのである。
自らの動画を通じてコロナウイルスで影響、被害を受けた人や医療従事者を励ます選手も少なくない。こうした活動は連日のように大リーグのホームページで担当記者が報告している。
 変ったところでは選手のユニホームの生地を使ってマスクが製造されている。大リーグ機構とオフィシャルのユニホームメーカーの「ファナティクス」社が協力。100万枚のマスクと医療用ガウンの製造に乗り出している。
すでにヤンキースのピンストライプの入ったマスクが完成しているそうだ。
▽シーズン中に慈善活動
 もともとメジャーリーガーはチャリティーに熱心だ。
よく知られているのはロサンゼルス・ドジャーズのエース、クレイトン・カーショー。妻のエレンと基金を作り、2011年から毎年、ドジャーズ・スタジアムで「カーショー・チャレンジ」というチャリティーを主催。これにはハリウッドの俳優らも協力している。昨年は8月8日に行われたが、基金開設からすでに約12万㌦を集め、ロサンゼルス、ダラス、ドミニカ、ザンビアで恵まれない子供たちの援助などを行っている。
 田口壮(現オリックス・一軍総合兼打撃コーチ)がセントルイス・カージナルスに所属していたとき(2002~07年)、シーズン中に選手が主催して各種のチャリティーゴルフ大会が行われ、参加したと聞いた。チャリティーで集まったお金を地元のNPOや病院などに寄付するのである。
 大リーグでは米国籍以外でも21か国の選手がプレーしている。また本拠地の家は仮の住まいで、故郷や気に入った都市に自宅を持つ選手も少なくない。そうした選手はシーズンが終わると故郷に帰ってしまうので、公式戦中にチャリティー行事が開催されるのだろう。
日本のプロ野球ではチャリティーの催しはシーズンオフに行われるのが普通だ。(了)